部長がはたらき人形

悪夢のように続いた招待状業務の終焉が、ここでようやく見えてきた。この業務に捕らわれていたあいだ、部長席の電話受けとメールチェックが、まるで疎かになっていた為、ここへ来て、本業である部長のスケジューリングが 地獄の黙示録のようになってしまった。

この日だけで、タブルブッキングが2件。こんなケアレスミス、普段のわたしなら、断じて 天に誓って ありえない。しかしブッキングしたものは仕方ないので、部長に1秒の休息もない地獄の黙示録予定に従って動いてもらう。自分の好みか否かとは無関係に、人それぞれに天職というものがあるとしたら、わたしのそれは 秘書 かもしれない。秘書なんて たまたま今そうなっているだけで、秘書検定も持ってないし、スーツも着たことないし、来客にお茶を淹れるとき、かならず手にお茶ッ葉がいっぱい貼り付いてとれないタイプだけど、わたしは秘書に向いていると思う。沢山のひとをまとめるとか 間に立って調整するとか、その手のコミュニケーションは絶望的に苦手だし不可能だけど、部長のように、特定のひとりの人物に対して密着したコミュニケーションは、すごく楽だし向いている。……たまたま、今の部長とわたしの相性が良いから楽なだけなのかもしれないけれども。

一通り、業務が片付きそうになってきたので、仲良しのミスソフィアちゃんと誘い合わせて喫煙ルームへ。フロアではぜったいに喋れない話を、いつもこの5分位の間に報告しあう。しかし、ふたりきりの喫煙ルームで、ミスソフィアちゃんの手から火の点いたタバコが 吸煙機の吸い込み口へ落下!休憩中なのに ボヤ騒ぎとなり、キャアキャアと騒ぎながらの鎮火活動で、気づいてみれば、休憩前よりも疲労が増大。てんやわんやの毎日。