惑星めぐり

今週のしごとは、もう徹頭徹尾ヒマ過ぎてさいあくな心地であった。いや しかし、まさにしごとの時間中に自分に今現在抱えているしごとがなくひまである!とわざわざ給料泥棒を公言する馬鹿はいないので、もしかしたら そtれはわたしだけではないのかもしれないけど、わからない。ひまであることを隠して何かをしている風を演技するのも、幸せなことかもしれないけど、不毛。読んでいる途中の小説から“公式には存在しない人物”というセンテンスが、丁度黄色の蛍光マーカーで浮かび上がってきた。しごと。しごと。しごと変わりたい。

夜は、大学時代の後輩ガール、トミコと呑みの予定。訪れる予定のカレー屋さんは、大行列が予想されるので 綿密に時間のタイミングを計算して、カフェで酒などを呑みながら来るべきときを待つ。前に会ったのは、トミコがうちの近隣の住みたい街ランキングっぽい街に引っ越してきた直後だったので、多分3ヶ月くらい前。どうでもいい話を色々と会話する。そして わたしはこの上もなく 楽しかった!!!

メインのカレー屋ではWRも虫取り少年のようなコーディネートで颯爽と合流し、トミコと利害関係が一致する「おそるべきひとびと」について ドストエフスキーばりの独白をひとしきり述べたあと、次のバーで酒を一杯ぐいっと煽り、「明日は同僚の結婚式なのでかえります」と言い残して鮮やかに帰宅した。WRも 図らずもトミコという同志を得て、すっかり気分持ち直したようであった。WRが去っていったあとのバーには、ぽつぽつと妙齢の女性客が集まりはじめ、テレビに何かをセットしている…と思ったら、大音量でレピッシュのリミテッドエディション的なDVDボックスを再生し始めた。そのバーは、わたしが死に至らしむ危険のあるスツール席しかなかったこともあり、我々も一杯呑み切ったところで場所をチェンジ。なんでもいいからスツールでない椅子に座りたい、と目についた別のバーに入る。

トミコって 学年が少し離れていたこともあり、学部時代は挨拶くらいしか会話したことがなかったけど、おもしろーーーーい ね!普遍的な事柄を、なかなか普遍的なかたちで説明できないわたしの言いたいことを事も無く的確に読み取ってくれるし、頭がいいし勘もすこぶるいいのかも。もっと色々なことを話したい。結局は、どんな恨みつらみや愚痴を口にしたとしても、遺恨の影さえ残さないで面白くできるともだちがよい。

しかしレピッシュ地獄から逃れ逃れたどり着いたこのバーでも、事件が起きる。お客さんで誕生日のひとがいたらしく、大音量で商業主義のバースデーソング(ドリカムの歌らしい)が流れ出し、店全体で誕生日を祝わなければならないべき雰囲気に包まれてしまった。しかも、見た感じからして31歳の誕生日かな?と思っていた女性は、今日 21歳になったばかりというのだ!肉色のストッキングに、白い紐が縦横無尽に踵に絡まった、白いサンダルを履いていた女性。衝撃を受けているうちに、今度は店の前に救急車がとまって、路地裏の別の店で人が倒れたとか何とかで、凄い勢いで店の前の道を担架が暴走していった。金曜の夜の盛り場。いかにもありそうな事件だけど、担架に担がれてきた女性を乗せた救急車は小1時間も発車しないで受け入れ先を探しているかのようだった。騒がしい夜。タクシーで帰るトミコを大通りの途中まで送る。雨が霧吹きのように頬にあたる。

お酒を呑んで大騒ぎのあいだに おてがみがきた



返信遅くなってしまいました。新譜聴いて下さり有難うございます。
シングルですか?アルバムですか?

ライブとか招待しますので都合が宜しい時にでも是非。

お褒め頂いて嬉しいです。



何かの定型に准じているほどのこの言葉選びの丁寧さに、こちらの様子を伺って怯えているひとのようにも思えるし、とりつくしまもない冷徹さも漂うし、慇懃無礼だとも感じる。だけど、これは全然 事務的な冷徹さの羅列ではないのだ。わたしが言葉を読み違えるなんて、誰の為にも、永遠に、もっともあってはならないことだ。そのことだけはわかる。云うべきことをひとつも漏らさず、不必要なことをひとつも書かない言葉というのは、それは、突き詰め、考えるほどに、美しく簡潔な定型文にしかなりえないのではないか?つまり、それは すべて ほんとうの言葉だ。わたしが求めていたほんとうの言葉は、誰に読ませても差し支えのない、こんな言葉にしかならない。詩的な言い回しも、奇矯な行動も、ほんとうに詩的で奇矯な人間には、そんな素振りさえ必要ないのだ。いつも わけがわからなくなる。

そして、こういう声が届くたびに、「あなたは?あなたは真剣に生きているのですか」と問い質されているような、身がすくむような気持ちにさせられる。今の自分では、まだ、かけられる言葉なんてほんとうはないのだ。何も、何も、何もない。わたしにはあなたに与えられるものも、提示できるものさえも、何もないのです。身を隠したくなる。

顔だけ洗って、ベッドに潜り込む。トミコはまだタクシーの中かしら?と考えたところで夢のなかに。