ワインと人

若干の残業を済ませたら、自由な金曜の夜が来た。この晩は、市ヶ谷で友紀ちゃんと待ち合わせ。いつものようにふたりきりの食事ではなく、一ヶ月前 ゴールデンウィーク中のホームパーティーで知り合った方々も一緒に、賑やかにワインを呑むことになってる。市ヶ谷は 書き物仕事をしていた時代、しょっちゅう来ていた。WRが神楽坂のマンションに居たとき、一緒に散歩したこともある。でも、単にお酒を呑むために、市ヶ谷の駅で降りるのははじめて。会社の最寄り駅からの乗り換えが意外に複雑で、湿気と人間の蒸気で 空気がむっと澱んでいる地下鉄の乗り換え階段を あっちへ行ったりこっちへ行ったり、滅多にないことだけど 迷ってしまう。音楽を聴いてた。あっちへ行ったりこっちへ行ったり、迷って 迷って、何処でもいいから辿り着いた何処かに 辿り着いただけで安心して、考えることをやめてしまう。

Kさんのワインバーはこじんまりとして清潔で、空間の居心地がとても良い。隠れ家的というより、既にビルの地下の突き当たりに完全に「隠れている」お店なのに、席について20分も経たないうちに、お客さんで満席になってしまった。オーナーが勝手にドボドボと注いでくれるシャンパーニュやワインも、勝手に運ばれてくるお料理も、どれもこれも美味しくて幸せ。初対面も方も含め、最終的には10人と少しのひとが居ただろうか?ゴールデンウィークのホームパーティーの時と同じく、碌な会話をした記憶がないけど、あっという間に終電車手前の時間になった。安ワインを飲むと悪酔いするけど、今夜のワインは飲んでいる最中から 悪い酩酊感が全くなく、非常に大丈夫な感じだったので、毅然として電車で帰宅できた。安心なきんようの夜を、ほんとうにありがとうございました。

帰宅すると 除湿エアコンがカタカタと起動するダイニングで、WRが読書に勤しんでいた。わたしは服を脱ぎ捨てるだけ脱ぎ捨てて、そのままベッドに潜り込む。何もしないで何も考えないで眠るのって、さいこうに幸せ。明日のことはぜんぶ明日に考える。