遠い近い散歩

2010年3月期第1四半期決算発表の日。開示時刻までは、年に4度の超多忙が押し寄せたものの、特に大きな発表もトラブルもなく昼食をとり損ねることもなく、すべてがつつがなく流れに乗って流れていった。夕方は、伝票処理など月末的な庶務に追われる。夏休みまで あと一週間。今は目の前のケチな土日なんかより、夏休みのほうがずっと愉しみ。

夜は 今夜こそWRがわたしの勤務先近辺まで迎えに来るというので、路傍でカフカ読みながら 待ってた。WRは クライアントのある天王洲から、高輪の辺りまで徒歩でやって来た。高輪からは二人で「夜の散歩会」と称して、まずは三田までテクテク歩く。それで慶応大学と東京タワーを拝むつもりが、裏通りを麻布の方に逸れて進んでしまったために、気がついたらうっかり麻布十番の方まで来てしまっていた。しかし、当初の目的を逸脱するのが たいした目的のない散歩の楽しいところなので、そのまま麻布十番商店街で、大学生や外人の集団で大賑わいの台湾料理屋で台湾麺を食べて、ついでに六本木へも足を延ばした。ヒルズのツタヤブックスで、ねこのパラパラ漫画のメッセージカードを購入。そこから(誰が出演しているか知らないけど)ミュージックステーションの生収録真っ最中のテレビ朝日の横をくぐり抜け、ミッドタウンを見上げながら、六本木の真ん中へ行く。青山ブックセンターに寄り、WRは新装版「オバQ」を、わたしはグレングールドとかの文庫を購入。今夜は本屋にばかり寄っている。大江戸線で乗り換えしながら帰るのもシャクなので、そのまま六本木を横断し、いつも前を通りすがるたびに震え上がる「心臓血管研究所付属病院」の前を通って、乃木坂から地下鉄に乗って、家に帰った。あまりにも無意味で長い散歩のため、足が棒のようになる。

会社帰りのビジネスマンがいて、格好良くて高価な自転車に跨った流線型の青年がいて、夕闇を駆けるねこもいて、部活帰りのサッカー部もいて、モデルさんや外人の美人もたくさんいて、ホームレスもいて、ヨガ帰りのオーエルさんもいて、おそらく不法入国で悪いものを密売しているひともいて、100メーターに一人ずつ、トイプードルを抱いた中年女性に出くわした。


夏の夜の散歩は、いつもお祭りの夜のようだ。暑いばかりの夏の昼間は うんざりするのに、夜になると、今夜だけは何時まででも遊んでいていいよ、と云われているような気がして、足が棒のようになるのに、何処までも歩いていける気がしてしまう。


家で、レモンのカキ氷のアイスを食べた。WRは、レモンのカキ氷アイスより、もっと身体に良くなさそうな、エメラルドグリーンに着色されたクリーム状にのびるラクトアイスを食べていた。

週末疲れと歩き疲れが同時に押し寄せ、枕に顔を埋めた瞬間に眠りに落ちた。おやすみなさい。




↑ねこのパラパラまんがのメッセージカード 白紙のまんがに ねこがいます