読み返し
連休明けの火曜日。終日 ぐずぐずと体調がすぐれなかったので、残業しないで早目に帰宅。以前なら 本を読むかうたたねするかのどちらかしかなかった「ぽっかり空いた、ひとりの時間」だけれど、今はそんな時間こそ 引越しに向けた片付けをしなくてはいけない。しかしできない。できないくせに、気は焦るので、部屋にいる限りゆっくり本を開く気にはなれそうになく、だからこんな過渡期はほんとうに困る。
夜が真夜中になる前に、ひさしぶりに三軒茶屋方面へ夜の散歩に出掛けてみた。音楽を聴きながら歩くのにもっともふさわしいと思えるのが、こんな夜の、こんな道だ。東京に来てから、夜が好きになった。田舎の夜は、夜一面に 星がこぼれ落ちていて、夏でも冬でも空気が澄み渡っていて、虫や蛙や獣の鳴く声や、木がざわざわとそよぐ音ばかりが 人間のいない闇の中で響きあっていて、そういうものは街の中ではけっして手に入らない、恵まれたことなんだよ、ということを幾ら読んだり聞いたりしても、田舎の夜は、ただ だだっぴろいだけの、人間のいない孤独な場所で、わたしは毎夜毎夜が訪れるたび、淋しさできりきりと不安になって仕方なかった。だから 都会の狭い夜空も、タクシーのクラクションも、ミュールが夜道に響く音も、あの何もなさに比べたら、とてもよいと思える。
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今読んでいる本
- 作者: 尾崎翠,中野翠
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
- 発売日: 2002/10/01
- メディア: 文庫
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