なつやすみ記◆3

連休の何が嬉しいかというと、夜も朝も気にしないで 眠ったり 起きたり 食事をしたり また眠ったり、勝手気儘に暮らせることだ。真夜中にせっせと荷造り作業を進めて、朝に眠って昼前に目覚めると 荷物の整理と梱包は、7割方終わっていた。棚やクローゼットに収まっていたものが外に出たので、片が付いたといっても、部屋はちっともがらんとしないので気分が出ない。ベッドの中でゴロゴロしながら 普段つけないテレビを付けると、ちょうど北島康介が泳ぐところで、金メダルを獲る瞬間を、生中継で見ることができた。しかしテレビで水泳の試合を見ても、動体視力が作動していないわたしは、誰が誰だかまったくわからない。そればかりか1、2、3着の見分けもつかない。北島康介は、水泳帽をかぶって目が釣りあがっているときのほうが格好良いと思った。陸にいるときも、ずっと水泳帽をかぶっていればいいのに。

WRは月曜、火曜と仕事があるので、昼下がり わたしは単身 掃除道具をブラ下げて駅の反対側の新居へ赴き、窓を開けて空気を入れ替え、せっせと床を拭いておいた。暑くて耐えられないかも、と危惧していたけど、新しい家は思いのほか風通しがよく、「空き家」特有のむっと澱んだ空気は、数時間の滞在のあいだに流れていってくれた。

再び踏み切りを渡って、謎のクマのダンボールで埋め尽くされた自宅へ帰る。ライターだった頃に送られてきていたオシャレ風雑誌の山を抱えて、古本屋へ売却。スタジオボイスとかマーキーとか装苑とかまぁそういうメジャーなサブカルが詰まった上質紙の束。夢捨てきれない系の若者たちへ届け。放たれろ。

夜 WRが遊びに来た。虫とり少年のようないでたちが可愛い。WRがアイスを食べて眠りこけているあいだに、わたしは近所のよろず屋へ出掛け、新居では使わない折りたたみ式のテーブル2つと電気スタンド、ブランドの靴をあざやかに売却。ぜんぶで1500円。テーブルやスタンドはゴミに出すと逆にお金がかかるばかりか、引き取り日時の申し込みを事前にしないと捨てようにも捨てられないので、よろず屋が近くに存在していて助かった。
世の中にとってもわたし自身にも 負の要素しかない有料ゴミが、一転してひつような人の手に渡る可能性を持ち、あまつさえ僅かなお小遣いさえも手に入るなんて。己の機転に武者震いする。1500円を握り締めながら(これこそまさしく功利主義ベンサム‥‥)と断片的な単語が頭の中で点滅したものの、圧倒的な知識不足の為 それ以上何も閃かない。

明日は荷造りの仕上げと 旅行の支度、お土産の買い物。