なつやすみ記◆9

朝いちばんの上映に行く為、早起きをする。WRはベッドから起き上がったそのままの動きから梱包を始めていた。言うまでもなく 彼の部屋は書籍とCDの量が並ではないので、これまた言うまでもなく、彼の引越しも一大事業となる予感。

小雨が降る中、東西線に乗って早稲田松竹へ。アラン・レネ特集の初日。「戦争映画で夏気分」というのは、自分が昭和の子であることをいかにも実感するけれど、「二十四時間の情事」の世紀の駄作っぷりには度肝を抜かれた。「二十四時間のジョージ・ハリスン」でも撮った方が、まだしもいい映画になるかもしれない。別に特にバンドがある日でもなく、ギターに触るわけでもなく、昼前に起きて寝癖頭でコーンフレークを食べたり 無言で2ちゃんのジョージスレに書き込みしたり ナンを焼いてみたが若干失敗する、等々 彼の何気ない一日をシンプルに映像化したドキュメンタリーであればいいと思う。

WRは 映画を3本観たあと、髪を切りにいって、バンドの練習。アラン・レネ2本で挫折したわたしは、荷物を運び出して蛻の殻になったアパートへ帰り、最後の掃除をして、不動産屋に鍵を返した。がらんとした部屋というのは、それがどんな部屋であっても、ありきたりな感傷を呼ぶ。毎日此処にいたのに、もう二度と来ることがない、という不可思議さは すべて 死の不可思議さや不可解さに繋がっている。最後の荷物である掃除用品を抱えて、徒歩10分の新居へ向かう。小雨が本格的な雨降りになりそうだった。

夜は神楽坂へ。この日もまた早朝から大活躍だったWRは、明日からまた仕事だというのに、ダンボールを組み立てて 荷造りの準備を頑張っている。