59日

部長の煽動による、納涼会という名の会社飲み。噂には聞いていたものの、入社半年にして飲み会初参加のわたしには見るものすべてがおもしろすぎた。

中でも、勤務中は業務上以外の余分なコミュニケーションはいっさいしない、まじめでおとなしい男性が、お酒 一滴でシフトチェンジし、破壊的なおもしろさを発揮していたことが衝撃的だった。そのひとが喋っていたのは(大して酔っ払ってもいない時点から)すでに「会話」ではなく、意味を為さない雰囲気語であり、要は無意味な言葉を断片的に口走っているだけなのだけど、その一語一語にとんちが効いていて、すごい文才を感じた。動作にも並々ならぬキレがある。
会社のひとたちは、それぞれみんな音楽の才があるので、会場には ありとあらゆる楽器が持ち込まれ、かわるがわるにセッションしたり歌ったり。どの曲もちゃんと70年代風情でとても耳に心地よい。最終的には アドリブなのに豪華すぎるアレンジのスティービーを大合唱し、全員 あたかもミュージカル映画のワンシーンのような作り笑顔を率先して顔に浮かべて、宴は晴れやかに終了した。

それにしても「飲んで変わるひと」のメタ的なインパクトは そうとうに大きかった。帰りの電車でも、あまりの衝撃で頭がぐらぐらしっ放しで、帰り道もどうやって帰ったのか記憶がないほど(酔っ払っていたわけではない)。

鬱々とした雨降りがつづく。こうやって 雨が季節を目隠しして、降り止んだ頃にはまた秋の気配が増していることだろう。

“ユーザー登録から本日までに日記をつけた日数:59日”
今日の時点で、こんなカウントがされている。過ぎ去った日を 欠かすことなく記入して、それが何だと言うのだろう。別にどうしたいわけでもないしどうにもならない。けれど「あったことをそのまま記す」日記を、まいにちブログに記述するひとは少ない(なぜなら、それは昨晩見た夢の話くらいつまらないので)。つまらない女のつまらない日常の 59日分の堆積。