大山鶏

金曜日。この日のランチは、週に2日は通っている 会社近くの和食屋に。

此処のメニューのひとつに「大山鶏の炭火焼定食」なるものが存在しているのだが、この「大山鶏」を「おおやまどり」と読むひとがとても多い。大山は、鳥取県に存在する山で、鶏がにわかにフューチャーされるようになったのが果たしてどのくらい前からなのかはわからないけれど(記憶の中の大山に 鶏の姿は無い)、島根の子だったわたしにとっては、小さい頃に スキーや林間学校などで何度か訪れたことがある、ローカル的にメジャーなスポットだ。しかし、都心のオフィス街において「大山」を知っているひとは稀だと言わざるを得ず、そこでメニューを見たひとが昼休みのとぼけた頭で「おおやまどりの定食ひとつ」と言ってしまうのは 無教養でも無知でもない、ごくごく自然なことのように思え、しかも「小学生でも読める簡単な漢字」だからこそ、注文の際には「おおやまどり」で話が通じていたはずの店員が、料理を運んできたときに 突然「こちら だいせんどりの定食になります」などと真実を暴露するという裏切りを見せ、当の客は(おおやまじゃなかったのか‥‥テヘ)と、内心に一抹の恥ずかしさを抱く、という構図は、「大山」を「だいせん」と読めるわたしでも見ていられない。メニューに振り仮名を振っておくべきだ、と断固として思う。

わたしの名字も、小学生なら誰でも書ける平易極まりない漢字の羅列なのだけど、はじめて名前を読み上げるひとは、200% 音読みすべきか訓読みすべきか判断できず、その場で固まってしまう。まだ「大山」のように 寸分の疑いもなく堂々と「おおやま」と読んでもらえればかえって訂正しやすいものだけれど、迷って迷って迷った挙句、おそるおそる間違えられる、そんな名字だ。

だからメニューにくらい、振り仮名を振ってあげてほしい、と願ってやまない(面倒くさいのでぜったいにそんな陳情はしないけどね!)

帰宅後、携帯屋へ寄ってから、WRと外でごはん。金曜の夜は、飲みにいくのも家でのんびり過ごすのも、どちらに転んでもよいものなので、よい。部屋で映画でも見られたらとても良いような夜だったけれど、二人とも平日の疲労に押しやられ、文化的生活をかなぐり捨ててとっとと寝た。