あきやすみ記◆4

【4日目】

温泉でゆっくりできるのは、同じ宿に何日か滞在する場合に限る。今回の日程のように1泊しかできないとすると、旅館にいる間中 食事やお風呂や起床時間に追い立てられ、普段の生活以上に規則正しく慌しく過ごす羽目になる。今回はとくに チェックインが夕方遅くなってからだったこともあって、朝が来るのがあっという間だ。朝の露天風呂も朝食も、こうなるとチェックアウトというゴール目指して、制限時間内に乗り越えるべき障害かのように勘違いしそうになる。そんなこんなで無事チェックアウトを完了、また宍道湖に沿ってぐるりと走り、お昼過ぎの飛行機で羽田へと舞い戻った。

地方の間取りに慣れると、一瞬ひどく小さく狭く感じたけれど、やっぱり東京の自分の家に帰るとほっとする。WRは驚くべきことに、ほんの1時間 家でごろんと休憩しただけで、バンドのリハーサルに向かっていった。旅行帰りのその足で、3時間ドラムを叩くのだ。そんなこと、わたしにはとても不可能、と思いながら出掛けて行くWRを見送ったけれど、ミュージシャンは国内でも海外でも 年中ツアーに出掛けて行ってライブをやっているんだから、そんなに大変なわけじゃないか、と思い直し、しかしWRは 別にツアーに出掛けるミュージシャンではない一般演奏者なのでやはりこれはおかしい、とまた思い直した。わたしは洗濯機をぐるぐると回しながらお土産を散らかしたり新聞を読んだり明日からまた会社か、とわざわざ考えてブルーになったりしながら気ままに過ごした。

この日読んだもの

文藝春秋 2008年 10月号 [雑誌]

文藝春秋 2008年 10月号 [雑誌]

空港で買った。興味深い記事、読んでたのしい記事共に特になし。この雑誌には、十年以上は軽く続いていると思われる“同級生交歓”というグラビアページがあるのだけど、わたしは昔からこのページが好きだ。とくに、写真の下に 同級生代表が書いている旧友たちの紹介文の文句が好きだ。思わずニヤニヤしながら読んでしまう。これに出てくる“同級生”たちは、かならず 社長か教授か弁護士か医師か芸術家なんだけど、職業や肩書きが足りなくて選抜されず、影で泣いている同級生もいるに違いない、などと思わず下衆な想像を繰り広げてしまう。