警報器・酒を飲んで苦しむ

土曜日。WRは 早朝9時から歯医者と美容院。首から上のメンテナンスの余念の無さに脱帽する。わたしは夕方まで用事がないので、部屋でうつらうつらと寝っころがって過ごした。眠りすぎて首が捩れたし 頭痛もするけど、自分の体温で温まり、くしゃくしゃに丸まった掛け布団にしがみついているのは いつの季節でも至上の幸福だと思う。しかし そんな幸福な惰眠を貪っていた正午前に、静寂をやぶる来訪者が。マンション全戸にあたらしく取り付けるという、火災報知機の設置業者がやって来たのだ。寝坊と決め込んでいる休日に玄関のチャイムを鳴らされたとして、宅急便でも集金人でも同居人でもぜったいに起きてドアを開ける気などしないけど、火災報知機の設置人だけは例外で、この人たちはあたかも「未来世紀ブラジル」に登場するエアコン修理人のように、ドリル持参で隣近所の天井に穴を開ける騒音を響き渡らせながら徐々に我が家に近づいて来たので、いくら起きないわたしでも、チャイムを鳴らされる前に すっかり目を覚ましてしまった。

全戸・全部屋に取り付けるこの火災報知器ついては 個人的にひとつの懸念があって、約一ヶ月前 この家に引っ越してきたときに、すでにわたしたちは ガス会社の親父の勧誘にしたがって、独最新型火災報知器(月賦)を独自に設置していたのだ(「いずれにせよ半年後には設置が義務化されるから先に付けておくべきである」だとか「なお マンションが義務的に設置する報知器は、無料なだけに、出火以後でないと作動せず、実質無意味である」というようなうたい文句にまんまと踊らされた挙句の愚行)

引越しという劇的な環境の変化で舞い上がってこんなものを設置してしまったけれど、よく考えたらわたしもWRも長いこと一人暮らしをしていたけれども、火を出したことなど一度もなく、とくに動物やこどもがいるわけでもないので 月々のガス料金の何割かに食い込む有料火災報知機など、わざわざ付ける必要性など無かったのだ。無料の火災報知器設置人が去ったあとの各部屋には、先住者(有料)と新参者(無料)、二器ずつ、総計六つの報知器が貼り付いている。多い。有料のほうは、速やかに解約したいところだけれど、ガス屋の親父が壁に思い切り空けた穴について考えると気が滅入り、とりあえず思考停止したくなる。外したあとの壁の穴を見たくないばっかりに、月々の料金を払い続けてしまいそうでおそろしい。

夕方 お酒を飲みに行く約束があったので、ようやくのろのろ起きだして、シャワーを浴びたり髪を梳かしたり。ぐずぐず支度をしていると、WRが帰ってきた。歯医者と美容院の直後と聞くと、なんとなく「きれいなWR」という印象(ふだんが汚いというわけではない)。

夜のお酒は楽しかったけど ビール1杯飲んだ時点でめくるめく体調が悪くなり(主に頭痛)、途中 2軒目を目指して夜の街を散歩したところで途中棄権。22時過ぎに、ひとり戦線離脱し帰宅する。頭の内部で がんがんと鐘を打ち付けるような頭痛が鳴り響くなか、それでも喋りながら大笑いしたのが良くなかったのだろうか、酔っ払いのそれとは一風異なる千鳥足で家に帰りつき、酔っ払いの嘔吐感とはあきらかに異なる悪寒で すみやかににんげんが終了した。一晩限りの風邪のようだったけれど、風邪でもなかった。鎮痛剤を飲んでぐっすり眠る。翌朝は何事もなく快復。