期待

朝と夜の空気が澄んでいる。秋は足早に過ぎるのに、こんなふうに素晴らしくよい季節を、会社のビルの中に閉じこもって浪費するなんてもったいない。2匹のねこは 毎日が休日だから羨ましい。ねこたちは仕事も勉強もなくていいね、と云うと「ねこだから ずっと おうちの子」とねこは答える。ねこたちは 昼間 何してるの?と尋ねると「栗ひろい 梨ひろい」「もみじ狩り」と口々に云う。それがほんとうとは思えない。ねこたちは家ねこなので、テレビで見たことや願望を、じぶんがしたことのように思い込んで話しているのだ。

美容院へ寄って 伸びた前髪を揃えて帰りたかったけれど、予感通り、月の半ばの定休日でお店は閉まっていた。昨日といい今日といい、行きたい場所に限って 定休日に阻まれてばかり。駅から歩いてきた道を引き返して、スーパーで瞬速で買い物をして帰宅。今は引っ越しをしてから、1ヶ月半ほど。引越し直後は 住む家とその中にいる人数が変わったこと以外、自分自身の暮らし方そのものは 何も変わらないと感じた。今はちがう。帰宅して郵便受けを覗く瞬間から眠りに落ちる直前まで、今いる場所には ひとりきりの暮らしを続けていたらけっして気がつくことのできなかった、想像の外側の世界が広がっている。

なんとなく床に掃除機をかけたりしながらWRの帰りを待って、ゴーヤーチャンプルーで夕食。ビールが飲みたくてゴーヤーチャンプルーを作ったのに、うっかりと白いご飯で食べてしまった(雪、いけない子…)。

引き続き シモーヌ・ヴェイユ入門を読んで、WRとちょっとした諍いを起こし、プイと背中を向けたりまた戻ったり ねこを床に放り投げたりしつつも、結局は仲直りして スヤリスヤリと安眠する。不眠はもう治っている。てのひらのやけどは、ぷっくりとした水疱ができた状態のまま治らない。学校の遠足は大嫌いだったけど、この秋のうちに 何処か景色のよい場所まで遠足に行きたい。京都のような観光地ではなく、ちょうどこどもが日帰り遠足で出掛けるような何処かの名もない山に行って、鬱蒼と茂る木や草の風景が見たい。