昼も夜も

夜は冷え込むのに、ふとんを蹴飛ばしながら眠る癖が抜けない。クシャミをひとつして起きる。

昼も夜もともだちと食事。同僚という枠の中にも、少数だけど お世辞や遠慮や妙な褒め合いごっこが不要な、ともだちと呼べるひとがいる。結局 仲良くなれるのは、物の見方が極度に客観的なひとだけだ。くだらない“自己”に根差した 外界の眺め方をしないので、他人だけれど 同じ時間を過ごすことに苦痛をおぼえなくて済む。

昼は SMさんと会社近隣にある、よその会社の社員食堂でランチ。今度一緒に出演する、演奏会についての打ち合わせ。よその会社の社食は 自分の会社のひとにぜったいに会わないことが良い。

夜は同じ部署のSYさんと一緒に会社を出て、東銀座のイタリアン(*1)へ。
会社内の人間模様や わたしたちのほかには誰も気づいていない部長の謎の口癖などについて大いに語り合い、抱腹絶倒の晩餐だった。わたしたちの部長は 下々の社員がシマウマやキリンの群れとすれば、その中に唯一君臨するライオン然とした人物。リーダーシップがあり喜怒哀楽も声も大きく、面白い言動も多々見受けられるのだけれど、いかんせん部長は慶應ボーイなので、わたしたちにはお馴染みの、屈折や泥臭さや猫背の感じや長く伸びた前髪の隙間から世間を見渡すようなところが、微塵もない。SYさんもわたしも、慶應ボーイに対する頑なな、且つ、不当すぎる偏見は未だ健在。部長は言うまでもなく有能で面白くて彼が上司であることに何の不足もないものの、しかし部長の動きのところどころに滲み出る慶應ボーイっぷりだけは、一生迎合できないであろう。

明日も仕事なので 食事をしながら軽く飲むつもりだったのが、ついラストオーダーの時間まで飲み続けてしまった。SYさんは新婚3ヶ月で、残業後だという彼が、レストランの外まで迎えに来ていた。結婚している女の子と飲みに行くと、決まって彼が迎えに来る。幸福なひとたちを眺めるのはいい。地下鉄の改札でふたりとお別れした後も、さっきまでの大爆笑が何度も寄せ返してきて、ニヤニヤ気色の悪い笑みを漏らしながら夜道を歩いた。

(*1)http://www.chianti.co.jp/carina/