思い出せない

木曜は平凡な日だった、ほんの僅かの印象に残る出来事もなく、日中 どんなふうに過ごしたのかも、あまり思い出せない。しごとに関しては、考える部分が色々。しごとの中身に対してではなく、もっとずっと広範な視点において。理性を授けられた存在は、あらゆる障害を自分の仕事の材料として利用することができる。わたしにいつか、満足できる日は訪れるのだろうか。

ニュースが雨降りだと告げていたのに、窓の外の世界では降ったり止んだり繰り返したのに、結局傘の出番はなかった。雨は季節を失くさせる。春も夏も秋も冬も、雨が降れば ぜんぶ「雨の日」。

買い物に行かず、冷蔵庫の中にあるもので ささやかな夕食を作って食べたら、すぐに眠くなった。本を読みたいし、楽器を吹きにスタジオにも行きたい。自分自身を恍惚と眺めるような行為から、もっともっと、もっとずっと遠く離れたい。物を買ったり着飾ったり男のひとからチヤホヤされたり、そういう類の快楽、表層的なものに満足できないばかりか“それしかない”と感じるものに、この頃は瞬発的な憎悪すら憶える。眠る前には、いつもねこの人形で遊ぶ。今のおはなしは、ねこんこ がストリートミュージシャンになるために上京して、ねんねこは田舎に残ってねじ工場で働いているところ。ねこんこは、プロになるほどの才能は全然なくて 既成のうたばかりを歌っているのに、ねんねこは ねこんこが東京でプロになるのだとほんきで信じて憧れている。