夜に線をひく

火曜の夜 仕事終わり 急遽待ち合わせして友紀ちゃんと食事に行く。待ち合わせまで僅かに空いていた時間に、念願の鍋つかみをようやく購入。結局、コットン製のごくごくふつうのものを買ってしまった。関係ないけど、鍋つかみは“オーブンミトン”と呼ぶのが今風とのこと。匙からスプーンへ、ジーパンからデニムへ、菓子からスイーツへ、眼鏡からアイウェアへ、そして2008年初秋、鍋つかみはオーブンミトンへ。

カタカナに呼称が変わったものを頭の中で列挙してみると、単に雰囲気がお洒落っぽいからそう呼ぶようになっている、というだけではなく、それぞれが当初の名称を超えて、より複雑化・多様化した概念を指し示しはじめたから、ということがわかる。というわけで、鍋つかみも 鍋をつかむだけが能でなく、今後はもっと多角的になるべきであろう、と思い、手始めに、この冬はオーブンミトンを腕に嵌めて外を歩く、という新機軸を打ち出すのはどうだろう。銀座の雑踏の中(※ほんとうは新橋の雑踏の中)で、左手にオーブンミトンを嵌めてみる。左手だけ手汗を掻いた。


↑わたしが買ったのは、マリメッコのこのドット柄の布地の色違い。ショッキングピンクに山吹色のドットの鍋つかみ。

友紀ちゃんと中国料理のお店で食事(このお店は、席に通されると テーブルも椅子も各自の箸も、何もかもの仕様がひとまわりずつ通常より巨大で、巨人の国に迷いこんだのかと錯覚してしまった。すぐに慣れたけど)

7日前にもそういえば銀座で友紀ちゃんに会って食事をしたけど、話題はやっぱりぜんぜんつきない。相変わらずいろんなことを 思いあたる順から口に出し合うけど、友紀ちゃんとのお喋りでは、現在と過去に国境がない。そのどちらもが行ったり来たり、同じ体温で交錯する。普段と何も変わらない火曜の夜の 何も変わらない時間だけど、18歳や19歳のとき わたしの北新宿の賃貸マンションに泊まりにやってきた友紀ちゃんと パジャマ姿で「*年後はどうしてるかねぇ」と、何もわからない未来についてお喋りしていたことを、無性に思い出したりしたのだ。

深夜0時直前に帰宅。WRは お洒落なアニメのTシャツを着て、ダイニングで本を読んでいた。趣味の読書をしているときも、WRは 遊んでいるのではなく、勉強中のひとのように見える。WRの名前とはまったく関係ないけど もしWRに名前がなかったら「まなぶくん」とつけるのがいちばん似合う、などと心の中でひそかに考え、自分の思いつきのあまりの的確さに、ひとりでご満悦になって眠った。