ねこは形而下学

舗道の落ち葉が色紙のように赤や黄色に染まっているのに気がついて、ああ今ようやく秋が来たのか、と思うのだけど、早朝や夜は 既にもう すっかり寒い。暖房を入れている。

この頃は鞄にずっと林芙美子の文庫本を入れていて、通勤時間の隙間 隙間に本を開いてぽつりぽつりと読んでいる。下流の女に馴染むことも 上流の女に憧れることも到底できず、その両方を遠巻きに眺めながら どこまでも寄る辺ない自分自身を見つめるほかない芙美子の視点は、云うまでもなく 自分自身のそれと限りなく近い。平日は生活に追い立てられて、文庫本1冊でさえ なかなか読みきらないけれど、頁が減ってゆくのが惜しい本を鞄に閉まっていられる間は、それだけで人生の幸福期だ。

スーパーで魚を買って、インテリアショップでオーダーカーテンの受け取りをして、帰宅。暗い室内に灯りをつけると、ふたりのねこ(人形)はいつもいつも、朝さいごに見たときと同じ場所に、同じ姿勢のままで転がっている。にんげんたちが仕事に行っているあいだ、ねこたちの時は止まっているのだろうか?まさか…

食後は ねこがふたり並んでテレビを見ていたので、WRと一緒に、ねこたちの背後や横に回りこんで、その姿をデジカメで撮影。ねこたちは 物凄く真剣にテレビを見つめているので、凄い臨場感のある写真が撮れた。ふたつ並んだ猫背が とても可愛い(※後ほど写真掲載)

ねこの写真を激写しまくり、ひとしきり盛り上がった後、WRが楽器ケースからベースを取り出したので「練習するのかな…?」と思って眺めていたら、土曜に迫ったライブの日に“どの程度のノリ加減で演奏するか”を今から決めかね 悩みつづけていたようで、WRなりの手持ちのノリ(飛んだり捻じれたり弾けたりする最高潮にはげしいものから、わずかに体を揺らす程度のものまで段階的に色々ある)を 数パターン実践しながら「どれがいいと思う」と意見を求められて 困惑。本番で失敗しないように こういうこともちゃんと決めてから行くのがいちばん良いに決まってるけど、今色々試しても結局頭の中で煮詰まるばかりで決められないから、仕方ないけど 本番の演奏自体や何がどう転ぶかわからないシチュエーションに応じて、瞬間ごとにノリを決めていくしかないと思う。

次の連休がたのしみ。次の連休が過ぎ去ったら、2つの誕生日があって、クリスマスがきて冬休みになる。休みを心待ちにするばかりではなく、わたしはもっとすごいことがしたい。