同居人の生態

WRは 昼過ぎから同僚の結婚式に参戦。二次会のパーティーで 会社で組んだバンドの演奏を行うという。スーツにベースを背負って、ふらふらとしながら代官山へと出発。普段、大学時代の仲間と組んでいるライブのときは「緊張する」なんて滅多に言わないのに、この日は朝から緊張しすぎて いつになく くよくよとしている。「今日に限って緊張しすぎじゃない?」と声をかけると「自分じゃなくて、周りのみんなが失敗しないか不安」と内心を吐露。くよくよしているくせに、ひとのせいにしている!わたしは一日寝てすごすつもりで、パジャマのままお見送り。がんばってね!と思いながら、取りあえず朝食のベーグルだけはしっかり食べて、ベッドにもう一度潜り込んだ。

午後になってようやく起きだし、昨日作ったカレーを食べる。ドロっとしている。鶏肉が見つからない。

食べて眠っただけで、もう17時。あまりにも身体が重たいので、散歩がてら 久しぶりに隣町の商店街まで買い物に行く。引っ越す前は、片道徒歩20分で行けた町。駅の反対側のこちらに越すと、片道30分の距離になるので、たかが10分の差ではあるけど、なんとなく足が遠のいていたのだった。風が冷たい夕暮れの散歩は 断片的な思考がフィルム送りで頭を流れて、とても良い気分転換となる。辿り着いた商店街で、買い物を済ますと小雨が降ってきた。WR 傘持ってないし大荷物だけど濡れてないかな、と考える。降ったり止んだりの小さな雨の中をまた30分歩いて家に帰ると、三次会まで飲みに行くとばかり思っていたWRがもう家に帰ってきていた。演奏は とてもうまくいったという。デジカメで撮った写真(会社の同僚たちや、バンドのステージ、他のチームの余興、WRの同期の新郎と美人の花嫁さん)をコマ送りで見せてもらう。新郎には、わたしも2度ほど会ったことがあるけど、なんか気弱そうでもじもじなよなよとしているところが、WRにとても良く似ていると思うのだけど、同じ勤務先の同期に こんなにキャラの被りが顕著なひとがいて、WRの存在は大丈夫だろうかと心配になる。WRはいつも「彼はいつももじもじしているよ」などと安穏と語ってはいるが、当の本人も、負けず劣らずそう言われているのに違いなく、他人を批評している場合ではない。

WRは疲れた、と言って、早々にベッドに潜り込んだ。わたしも散歩以外何もしていないのに、まだまだ眠さはとれず、早寝をする。WRが先に寝ているところに近寄ったら、唐突に「…それはすごいっすねー」と いつになく鋭い舌鋒で寝言を述べたので、戦慄。WRは 自慢気に物を語るタイプのひとや、先輩風を吹かせるような相手に対して、平然と心にもない相槌やお世辞を言うのだ。多分このときもそういう夢を見て 起きているときと同様にまったく無感動に「…すごいっすねー(棒読み)」とご追従を言っていたのだと思う。WRのこういうところはほんとうにすごい。どう考えても心がこもっていないというより、何も考えていないし聞いていないのだけど、合いの手だけは 類稀なる社会性を保持している。