有楽町で会う

金曜日。朝の電車でSMさんに遭遇。同じ街に住んで同じ街に働きに行くので、こういうことは時々あるけど、わたしもSMさんも 会社の始業時間より 随分早い時間に家を出て、会社の近くのカフェで珈琲を飲んでから出社するタイプなので、朝に同じ車両に乗り合わせるのは 結構な偶然かもしれない。というわけで、朝から20分ばかり一緒に珈琲を飲む。SMさんは、わたしのつらくてつまらない会社生活に神様が授けてくださった“茶飲み友達”という恩寵かもしれない。何しろ、彼女は年齢も趣味も雰囲気も 同僚というカテゴリーで語るより“茶飲み友達”としてのほうが断然うってつけな女の子なのだ。

やはりフロアに人がいない。見た感じが閑散とするだけでなく、がらんとしすぎているせいで暖房を入れても室温が中々上がらず、実際にふだんより部屋のなかが寒いようだ。コートを着込んだ上にマフラーを巻いてPCに向かっている女性までいる。たしかに寒いけど、暖房の温度を上げにいくこともしないで、なんて格好悪いひとなんだろう、と内心で思う。やっぱりわたしは、寒いときや暑いときや眠いときや空腹なとき 適切な改善を試みないで 現状を放置したまま被害者っぽく振舞うひとが嫌なのだ。もちろん態度に表したりはしないけど、その手の怠惰さに対して寛容さがない。まぁいいさ、今週ももうすぐ終わるし、会社のなかの人間のことなんて、気にしていても仕方がない。

夕方になってからメールで友紀ちゃんと約束をして、夜は有楽町で飲むことに。ふだん自然に足が向くのは、イタリアンやフレンチが多いので、たまにはビールに焼き鳥もいいね、と意見が一致して、大きな街の駅前ビルにはかならず入っているような チェーン展開の和風ダイニングへ。

友紀ちゃんに海外出張がない時期は、月に2.3度はこうやって気軽に飲みにいってる。この日もいつも通り、会社で勃発した珍事について、日常生活のこと、恋愛のことなどをあてどなく喋る。そしてお喋りのなかで偶然、前日の木曜日に会った高校の同級生がお勤めしている会社が 友紀ちゃんの会社の取引先であることも判明したりして、面白い。

夜の時間は楽しいけど、終電まではあっという間。一時間に一本でも、(大晦日のように)真夜中に電車が走ってくれたら 何処にでも行けるし何処にでも帰れるのに、といつも思うけれど、終電という概念があってくれないと、不都合な人たちもいるのだろう(お酒を飲みながら、口説いたり口説かれたりしたい男女とか)

ダイニングを出て、酔い覚ましの珈琲を飲みに寄ったマクドナルドで、友紀ちゃんが 先日会社の付き合いで観にいったという“杉本彩演出・主演の 阿部定をモチーフとしたR18のタンゴ・ショー”に関して熱弁をふるっていたのが印象深かった。タンゴなのに何故か衣装は袷がはだけた着物だったとか、R18の部分が 舞台上では障子越しに影絵になって映っていたとか、わたしは終電が近くて明らかにそわそわしてるのに、妙に 説明が 細かい。なので わたしも言いたいことはぜんぶ言おう、と言う気になって、別れ際に慌ててネム子ちゃんの写真を見せてさようならした。友紀ちゃんは、ネム子ちゃんの写真を見て「八代亜紀に似てる」と感想を漏らしていた。しかし杉本彩といい、八代亜紀といい、友紀ちゃんの話に出てくるのは50歳の親父が好きそうなものばっかりだなー、なんでだろう、と思考しつつ、真夜中を走るお酒くさい電車に揺られて帰宅。しかし 明日から休暇とわかっている日の遅い帰宅は、それだけで自由を手にした気分。友紀ちゃんとは 忘年会の企画も立てなくては。

飲んで帰ったわたしとうらはらに、WRは 仕事で午前0時の遅い帰宅。夜 何食べた?と訊ねると「オニギリ3個」と言っていた。わたしばっかり美味しいもの食べてきてごめんね おそくまでおつかれさま 土日はゆっくり遊びましょう、と心の底から思いつつ速攻で眠りにおちた。お酒飲むともう、ベッドに潜る以外 何もしたくなくなっちゃう。