バッドスリープ

WRは昨晩からずっと頭痛で眠りこんでいる。それでも朝は わたしがぐうぐう寝ている間にきちんと起きて、デンタルクリニックへ行った。歯医者、と言えばいいものを なぜわざわざデンタルクリニック、などと長ったらしく気取った名前で呼ぶかというと、WR行きつけの歯医者は オフィス街の中心に高く聳えるオフィスビルの中にあって、わたしがほんの時々行くか行かないかの、家から徒歩5分のところにある、どらえもんの子供用スリッパやかばの人形が置いてあって、こどもの泣き声や母親が絵本を読み上げる声が絶え間なく響き渡っているような町場の歯医者とは まるっきり違う雰囲気の歯医者のように思えるから。とにかく、WRは朝 仕事に出るのと同じ時間にデンタルクリニックへ行って、昼前には家に戻ると かんたんな昼食を食べて、同僚のM君から買い取った電子ドラムが搬入されてきて、それを受け取り終わったと思うと、それから夜まで眠ってしまった。わたしはWRが二度目の眠りに着いた頃、ようやくちゃんと起床したので、朝食を食べてシャワーをして着替えると、もう午後3時前。せっかくの土曜日なのに、あっという間に日が落ちてしまって、何もできない。

クリーニング屋へWRのシャツを持っていって、スーパーマーケットで買い物をし、ドラッグストアで洗剤と柔軟剤を買って帰った。夕食用に鶏レバーの下処理をした(レバーみたいに入荷数の少ない生鮮品は、平日はいつも売り切れていて 買えない。何ヶ月振りかで明るいうちにスーパーに行ったら、棚に大量に並んでいたので驚いた)、それから 野菜と魚介類のマリネをつくった。

夕食の時間が近づいた頃、やっとWRが起きてきて「頭 ちょっとよくなったかも」と言う。本棚のある部屋の真ん中に、新しくきた電子ドラムが置いてある。家中でこの部屋だけが突出して“富裕層の子息の部屋”っぽい。

昼間あれだけよく眠ったのに、夜は夜でまた早い時間からベッドに飛び込んで、飽きるほど眠った。近頃の人間は、冬眠しないと冬が越せないのだろうか。ほんとうに信じられないくらい眠って、眠って、眠りまくる。