俗物考 ビンゴゲーム

昨日有休だったので、今週のはじまりは火曜日から。一日お休みしただけで、デスクの上に郵便物の山ができている。日中はさすがに仕事に邁進。出張中の部長に 年賀状の宛名のレイアウト(ファイル重い)をどどん、と見せたら「よくやった!素晴らしい!」と遠隔で激烈に褒められた。部長は 慶應ボーイなのに 恐るべきことにPC入力が「かな入力」のひとなので、下請けに出してもいないのに 宛名面が美しくレイアウトできている、なんていうことは、彼にしてみればこの世の奇跡に値するのだ。しかし 文字通りPCのキィを弾け飛ばしながら「かな入力」しているこの部長が どうしてここまで出世しているのかさっぱりわけがわからない。しかし、すべての生命体の中でいちばんの俗物は 上場企業の部長レベル・中小企業の社長や会長・地方自治体レベルのトップにあたる面々であることは間違いないと思う。どの職業、どの業界がどうという偏見は特にないけど、要はそこそこの出世をして、そこそこの評価を得、そこそこの満足を得ている(と思われる)それなりのひとびと、というのは 結局わたし自身の生育過程で多数を占めていたおとなたちの姿であるので、だから 部長の思考回路はわたしの父親の思考回路と殆ど変わらないと思える。わたしは 俗物中の俗物である、自分の父親のことが大嫌いだけど、彼の思考回路は熟知しているし、だから同じような俗物である部長の扱いや 部長からの扱われ方を わたしは誰よりもよく心得ていて、正直なところ、とても仕事がしやすいのだ。自分の父親の精神面や考え方の部分というのは、反面教師にしかなりっこない、と物心ついた頃からずっと思ってきて、ある地点まではその通りだったけれど、ここへきて父親の俗物根性が 反面教師ではなく立派な「教師」となり、実社会で活用されているという事実に 驚く。何事も経験しなければわからない、というけれど、それはまさしくこんなことだ。それでも自分の父親には「とんだ俗物でありがとう」なんて全然思わないけれども。

溜まった仕事を片付けたいけど、この時期にあんまり長く残業するのも心象が悪そうなので、めずらしく後ろ髪をひかれる思いで帰宅する。外食続きだったので、スーパーで魚を買う。もう一週間も 冷蔵庫で眠りつづけている巨大な大根を消費するため、この日のメニューは大根おろしを添えた秋刀魚と 大根と青梗菜を挽肉で炒めたのと 大根と葱のお味噌汁。ごはん茶碗以外のすべてのお皿に大根が混入している異常な事態。WRの帰宅を待つ間に、友紀ちゃんとひさしぶりに電話で話して、今年さいごのレストランの相談をした。手帳の予定をひとつずつ埋めていくと、あっという間に今年が終わる。

WRも仕事が忙しく、この夜も遅い帰り。テレビのニュースも最終版に差し掛かる頃、大根だらけの夕食をとる。WRのスーツポケットから ディズニー国で催された忘年会時のビンゴカード(WRはビンゴゲームの途中で会場を去ったとのこと)が出てきたので、ふたりで“ビンゴになった瞬間のひと”のポーズの色々なパターンを繰り広げて、盛り上がった。「ビンゴ!」と発した瞬間は、カードを握った方の手を高らかに宙に挙げ(このとき 同じ側の足も リズミカルに斜め上に放り出す)、あたかも鱗粉が舞うかの如く キラキラと華やかに表情を輝かせるのがポイント。WRによると わたしは この“「ビンゴ!」と叫ぶひと”の真似がすこぶる上手いとのことで、「やって」「やって」と幾度となくせがまれた。