銀座風でない

冬休みまであと2日。午後になって 急に 駆け込みの仕事や来客が続々と舞い込んで、突如として大忙しに。こんな心に余裕がないときに限って「総務課パトロール」という 社内で最も謎の部隊に 大幅に仕事の邪魔をされ、大いにじりじりする。うちの会社に限って言えば、総務部ほど意味不明の部署はない。総務部は、3日に1度はスーツにヘルメットといういでたちの部長を先頭に、課長、課長代理、主任、平社員と一列に並んだ隊列をつくって業務中の社内の全フロアーを練り歩き、照度計をあてて蛍光灯の明度を計ったり(明るすぎると電球の数を間引きする)、各部署の廊下にある、傘立ての周り(床)にぐるり、と蛍光テープを貼ったり(避難経路を確保する為 傘立てはこの線より外には一切動かすな、ということらしいけど、傘立てを動かしたい願望を持っている社員は未だかつてひとりもいない)、抜き打ちで各社員のデスクの周りをパトロールにきて、デスクの下に資料や荷物を詰め込んでいるひとを発見しては 問答無用で証拠写真を撮り、社内WEBにイニシャル付で載せたりするのだ(これを“タイホ”と呼ぶ)。

経費削減とエコと非常時の安全の為、日々集団パトロール及びタイホに明け暮れている総務課のひとびとは たいへんご苦労さまなことだと思うのだけれど、誰もが思うように、もっとも速やかに経費削減&エコすべきなのは、そのパトロール活動だよ、と思う。溜まった仕事をデスク周りに散乱させながら 鬼の形相で仕事していたら、うっかりタイホされそうになった(可愛こぶって誤魔化して なんとか今回は恩赦となったけど)。ほんとうに時間もお金も労働力も無駄なのだけど、いちばん仕事に人生を傾けているのが総務部のひとびとだったりするので、ほんとうに 世の中どうなっているのか、心の底からわけがわからなくなるし、凄いとも思う。

夜は 先月再会した高校時代の同級生(純子ちゃん)と銀座でお酒。カレーを食べたのちバーで飲もう、と話がまとまり “グルガオン”に案内してもらう。ひよこ豆のサラダや ナンにチーズが挟まったのをつまみつつ、ビール。インドカレーも美味しくて 幸せ。前回スペインバルで飲んだときと同様、仕事恋愛趣味生活 身の回りのことを思いつくままにお喋り。2軒目は、通りすがりに見つけた謎のバーへ移動。しかしお店に入ってみると、そこはバーというより国道沿いのファミレスの雰囲気だったので、ふたりして「騙された!」「こんな店もう二度と来ない」と店への嫌悪をむきだしにしながら飲む。しかも店員は全員男性で、全員顔色が赤黒く、全員悪い意味での薬中顔。しかもこの店は 一週間前にわたしが臨終した品川の店と同様、店内に大画面がありサッカーの試合を放映していた。わたしはここで品川と同じく画面に背を向けた状態で座ってしまい、先週の木曜日の悪夢が脳裏によぎる。それでなんとなくストッパーがかかったのか、グラスワインを飲み干すことを躊躇している自分がいた。不幸中の幸いか、ここの椅子はスツールではなく、ファミレスタイプの常識的な高さの椅子だったけれども。

帰りの電車の時刻が近づいた頃、近くのオフィスで残業中だった純子ちゃんのご主人が合流してくれたので、ビール1杯分の時間だけ3人で飲む。此の頃 結婚している友人たちと会う機会が増えているので思うのだけど、おもしろいひとの配偶者(恋人)はおもしろいし、おもしろくないひとの配偶者(恋人)は おもしろくない。あたりまえのようで これはかなり決定的だ。勿論「おもしろい=優、あるいは善」「おもしろくない=劣、あるいは悪」というわけではない(むしろ わたしがおもしろい、と感じるものほど世間的には劣とか悪と見做される場合が多い気もする)けれど、やはり一緒にいるひと同士というのは、何だかよく似たよい雰囲気が漂っている気がする。純子さんのご主人(同郷だけど初対面)も、残業後でへとへとだろうに、なんだかとてもおもしろい人物で、時々つまらないことを口走る部分も含めて、総合的にたいへんおもしろい雰囲気を醸しだしていた。ふたりともすらっとしているので、(同じ出雲っこなのに)並んで立っている姿が格好良くてうらやましい。来年もまた飲みにいこうね!と約束して 別方向の地下鉄に乗る。さいごのさいごに純子ちゃんとの再会もあり、今年はいつになく楽しい出会いに恵まれた年。

12時をまわって帰宅したけど、WRはまだ帰っていなかった。WRは チームの忘年会で有楽町で飲んでいたとのこと。一緒に帰ってくればよかったかも。