仕事納め

今日で仕事納め。しかし 出社直後の朝いちばんから、今年最大の部長の怒りが大炸裂した為、今年さいごの勤務日は 今年最悪の緊張感と震撼に包まれてしまった。最大の被害者は、部内でいちばん若く、最近いちばん仲良しのSM2ちゃんであった。午前中は、彼女にもまだ怒る元気は残っていて、叱られた直後も「雪さん 下で一服いきましょう」とメールが飛んできて、一緒に喫煙所で部長の悪口を言い合って憂さを晴らしたりしたものの、昼前にもう一度部長にガツンとやられて、昼休みには目が虚ろになっていて、夕方トイレで会ったときは、普段は美人で超勝気なSM2ちゃんだが、鏡の前でポロポロ涙を零していた。責任半分、とばっちり半分といった具合でさすがに一日中 どんな対処をしても怒鳴られつづけるのでは可哀相すぎる。

しかし可哀相、というのは心で思うだけで、傍から見ていて彼女の心境はとてもよくわかるので、彼女から愚痴を言ってこない限り、わたしは見てみぬふりをしているし、それがふつうというか、彼女に対する最大限の気遣いというものだ。

それなのに、昼食中、別の女の先輩がSM2さんに向かって「朝から見てたけど、ほんとうにSM2さんってかわいそう。あんな公衆の面前で怒鳴るなんて、部長完全にパワハラじゃん!SM2さんあれパワハラだよ。ねぇ、みんなさっきの部長のアレ、パワハラ以外の何者でもないよね?あなたパワハラされてるのよ!」などと凄い剣幕(かつ何故か無性にうれしそうに)語り始めたのだ。ひとの不幸を喜ぶ、ひとの卑しさを見たようで、酷く落ち込む。表向きは親切の振りをして、傷口に塩を塗りこむような真似をするひとは、一定数いる。先輩じゃなかったら、ぜったいに反論していたところだけど、なんとかそこから話題を逸らすことくらいしかできない。一日中煮え切らない気分を抱えたまま、仕事納め。

夜は飯田橋に移動して、WRの勤務先の同期30人に囲まれて、忘年会件結婚祝いの大パーティー。会ったことのあるひとは5人くらいで、あとはわたしにとっては初対面。30人もいればいろんなひとがいる。同期とはいえ士業の都合で大学出たての23歳もいれば40歳のひともいる。わけがわからないまま、色んなひとと挨拶を交わし、お酒を注がれ、プレゼントを戴き一次会が終了。二次会も同じように終了。しかし三次会で恐ろしい罠が待ち受けていた!

三次会は「カラオケ」という普段まったく縁のない不吉な場で、(こんなに音楽が好きなのに)23歳が歌う歌もわからなければ、40歳が歌う歌もわからず、その時点でとても所在無い気分に陥ったのだけど、さいご 解散した瞬間にとんでもない悪夢が起きた。しかし、カラオケ中唯一さいこうにたのしく、来てよかった、と思ったのは、Uさんという東大卒で魔太郎にそっくりな風貌のおとなしくみえるタイプのひとが、もののけ姫の歌を全編ファルセットを巧みに用いて歌い上げた瞬間だった。25歳とかなのに、ほんとうに魔太郎そのもの。ついでにもののけそのものでもある。わたしもWRも、Uさんの歌がツボに入りまくって、おなかをよじれさせ、涙を流して大爆笑。しかしエグザル(?)とか青山テルミー(?)とか、センスの欠片もない歌しか選択しないイケメン風のひとびとは、傍らでこんなに面白い狂気が展開されているのに、歌を選んだりお喋りに夢中でほとんど聴いてない。むしろ爆笑する我々ふたりの姿を見て、「そこのふたり、笑いすぎでしょ」などと言って笑い出す始末。どこまでセンスがないんだよ。魔太郎さいこう!もののけさいこう!もっともっと聴きたい!UさんはわたしとWRのためにゲゲゲの鬼太郎の歌もうたってくれた(Uさんは 世界中の歌のなかでこの2曲しか歌えないとのこと)当然、ゲゲゲの鬼太郎のうたもさいこうに素晴らしかった。カラオケに来て、こんな素晴らしいパフォーマンスを拝見できるとは。魔太郎には、是非とも結婚式に来てほしい。

このまま終了すればよい飲み会だったのに、最後の最後で悲劇が。

エグザルの歌などを酔っ払いながら熱唱していたイケメンくんのひとりが、お店の外に出たあと歩道で騒いだりふざけて暴れたりして、その時点で車道にふらふらと出ていったりして車にぶつかりそうになったり、とにかく大迷惑な酔っ払い方をしていて周りをハラハラさせていたのだけど、その酔っ払った勢いで、立っていたわたしに衝突してきたのだ。本人は前後不覚なので、どーん、と体ごとぶつかられて、わたしは尻餅をついて転倒。手首を捻る。狙ってやられたわけではないけど、突然殴られるのと同じような衝撃だったので、呆然としてしまう。一気に場がシーン、と静まり返って、最悪な雰囲気になってしまった。酔っ払って狼藉をはたらくやつは大嫌い。当然、そいつはみんなに怒られ「雪さんに謝って」と促されたのだけど、そうすると突然歩道に土下座して「すいませんでした!!!」と叫んで今度はいつまでも顔をあげない。かえって失礼、というより完全に馬鹿にしているのだろうか……しかし、結局はここまで悪酔いしているやつに常識を求めても仕方ないので、笑いで誤魔化して穏便に流す。悔しい。WRの同僚じゃなかったら、ぜったいに許さないんだけど。WR曰く、ふだんは仕事も出来るし紳士的なひとなんだけど、ということだけど、お酒を飲んだくらいで人格崩壊する程度のひとが、果たして紳士と言えるだろうか。しかし、この事件以来 ちょっといらいらすることがあると(電車の中でひとがぶつかってきたとか、運転マナーの悪い車がいたとか)、ぜんぶ(S川ブっ殺す…)と怨念のすべてがそのひとに向かうようになったので、ある意味で非常に便利。雨に降られても、シャワーのタイムラグで水をかぶっても、心の中ではS川が全部悪いことになっている。

タクシーで朝方帰宅。ふて寝する。