ロルナ ロルナ ロルナ

にちようび。お昼前に家を出て、恵比寿へ。新作映画「ロルナの祈り」を観に行った。劇場にチケットを買いにいくと、12:30の回がちょうど始まるところで空席もあった。けれども 何事にも余裕を持ちたいわたしたちは あえて次の回のチケットを買い、ガーデンタワー最上階のお好み焼き屋へランチに行った。さいきん、お好み焼きの美味しさに目覚めた。ボウルに入ったタネが運ばれてきて、自分で掻き混ぜて焼かなくちゃいけないお店は面倒だから嫌いだけど……お店のひとが 丁寧に焼いて、出来たのを運んでくれるお店が良い。海鮮焼きと豚肉入りを半分ずつ食べて、お昼から満腹になった。

珈琲屋で読書をしてから、映画館へ。新聞の映画評やWRがチェックしたネットの口コミサイトでもかなり評価が高い、ベルギーのダルデンヌ兄弟監督の映画。正直、この映画で描かれたひとたちを裏づける歴史背景や文化背景について まるっきり勉強不足の為、スクリーンの中の彼らの人生の“仕方の無さ”について、よく理解できない。あらかじめ多くのものを奪われている人々は さらに弱っている人々から奪って生きていくしかないということ。頭ではわかっても、やはり登場人物たちはそれぞれあまりにも弱く、短絡的で、刹那的に過ぎるように感じてしまう。わからないからかもしれない。一縷の希望や人間性を描いていたラストシーンも、映画を見ているのに「結局映画みたいなハッピーエンドは現実にはない」ということを真正面から突きつけられたようで、心が重たくなる。

映画館を出たあと WRとふたりで「ああでもない」「こうでもない」(色々な意見を交わした、という比喩ではなくてまさにこの言葉通りに発音しただけ)と小首をかしげて駅まで歩く。少しずつ冬の陽も長くなって、思いがけず明るい夕方。遠くのビル風が路地裏をびゅうびゅう通り抜けて、風はとても冷たい。アトレの有隣堂に寄ってみたけれど、此処には欲しい本が一冊もない。恵比寿に来て時間があるときはつい寄ってしまうけど、そういえばこの本屋で本を買ったことは殆どないと気がつく。

夕食はWRのリクエストにより醤油味のパスタ。ベーコン(自ら進んでは買わない)とキノコとほうれん草を入れたら いつもの2割増しで美味しくできた。円高還元で近頃はパスタも異様に安いし(イタリアの有名メーカーのが、500gで\170)、安い旨いと言って炭水化物ばかり食べていてはいかにも貧乏たらしい上に、身体中に糖がまわって死期が早まることも間違いないけど、とりあえずパスタをつくるとWRからこの上ないほどに褒めてもらえるので嬉しい。

夜は珈琲飲みながら読書をしたりNHKのドラマを観たり 漫然と過ごす。年末に買った、光文社古典新訳文庫の「寄宿生テルレスの混乱」を読んでいるのだけど、訳があまり好みではないのと(とは言っても原語で読んだこともないけど)、とにかくタイトル通り 主人公のテルレスが終始一貫混乱しきっているので、古典的な思春期小説で好きな物語のはずなのに、テルレス おまえいい加減に落ち着けよ、と思って頭にカァっと血がのぼり、手に持った本を投げ出したくなる。思春期の ある種普遍的なテーマを描いているにも関わらず、妙に現代の若者に擦り寄った翻訳の調子のせいで 思春期の心理の移ろいが、どうにも軽率なものに感じられてしまうのだ。しかし 幼さゆえの残酷な陰謀や生贄の描写は なかなか素晴らしいものがある。岩波で読みたい。

表紙といい字のでかさといい翻訳といい、見事に 半歩 センス ずれてる

寄宿生テルレスの混乱 (光文社古典新訳文庫)

寄宿生テルレスの混乱 (光文社古典新訳文庫)