Perfume ろくねんまえ

休み明け。朝 母から「今日で今の会社に勤めて一年だね!おめでとう」というメールがきていた。一年。まだたった一年。でももう既に充分だ、という気もする。まだまだ何も慣れていない、わからないこと できないこと まかされないことしかないけど、だけどおまえ(企業)の論理にはもううんざり、これ以上ここで知りたいことなど何一つないわ、という気分になっている。働きたくないわけではなくて、わたしは むしろ いつもぶっ倒れるまで働きたいけど。ぶっ倒れるほど働きたい仕事は多分 ひとつしかない。というわけで仕事は今日もいつも通り、しかしいつも以上の疲労を感じて、帰宅した頃にはぐったり。WRの帰りはこの日も遅い。買い物にも行かず 夕食はあるもので作るパスタと決めて、掛け布団や毛布がくしゃくしゃに丸まったベッドの上に バタンと倒れる。ねこも倒れる。

空気に今日、春の気配が混じった 夕暮れに遠くから響くこどもたちの声が嫌い 左手だけがいつも遅れるバイエルの音が嫌い 手首に滲みついた百合の花の匂いが消えない

ストックホルムフィンランドスウェーデンか 或いはそのどちらでもないか 渋谷区の路上 大理石の石段の上で待っていた夜の物思いを目覚めさせた 彼女 氷砂糖のようだわ

複雑な歓びと単純な悲しみを識っている ストックホルムに白夜はあるか 進化して劣化して昼と夜が裏返るのか 与えられ 恵まれ産まれたものは 意志では届かない遠い場所に還す為に在る とっくに砕けて雑じり合った破片を 漸く乾いた手の平で 果てしなくさらさらとふるいにかける 中質コート紙からわたしを見据える 気が済むまでずっと黙ったままでいるの 音楽は誰のもの?

蟹のトマトクリームパスタ、はらドーナツ、ぶどうジュース、ペニンシュラホテルカフェテリアの珈琲、ボブディラン。わたしたちがおなかに詰め込むものって ほんとうに いつもお洒落。ねんねこ と ねこんこ は うちに棲みついているふたり組のねこちゃんのなまえ。時には 写真も載せなくてはね。