バレンタインデイ、眠り、新宿

土曜日なのに珍しくWRのデンタルクリニックがない。正午直前まで、寝坊。室温調整が要らない空気の暖かさに驚く。目を覚まして、おなかを空かせたWRが、先日勤め先の送別会か何かで女性から貰ったという 小さな箱にモロゾフと書いてあるチョコレートを食べようとしたので、それを慌てて阻止して、本の部屋に隠しておいたバレンタインのチョコレートを渡す。他に食べるものが見当たらなかったとはいえ、バレンタインデーの朝いちばんに、別の女性に貰ったチョコを食べるのをみすみす見逃すことはない。……

去年はねこちゃんチョコクッキーを焼いたけど、今年はキッチンの匂いであっという間にバレてしまうし時間もないので、DELREYのやつを購入。ヨーロッパや日本の職人がつくる まるで宝石みたいな豪華なチョコは東京中に溢れている。だけどその種のチョコレートって、強すぎる洋酒が入っていたり、謎のトロピカルな果汁や 天竺から命懸けで持ち返ったような香辛料が入っているものだったり、なんていうか趣向を凝らしすぎてこどもの頃好きだったチョコレートの素朴な美味しさとはまるで別物、と感じることが多い。メイジやモリナガのチョコがさいこう、とは言わないけれど、風変わり過ぎるチョコレートはあまり好きじゃない。DELREYのチョコは、どのフレーバーも風変わり過ぎず、控えめで、美味しい。ベルギーに行きたい。ベルギーのねこ祭りに。ねこ祭りとチョコレートの旅。ホワイトデーのプレゼントに連れていってほしい。

アントワープで創業 チョコ屋 デルレイhttp://www.delrey.co.jp/

のろのろと身支度をして、WRと新宿へ。先月オーダーしたWRのスーツを仕立て屋に受け取りに行く。スーツのパンツ もう少し細ければいいのに、と試着したWRを眺めながら 専属仕立人のI氏に水を向けると、彼には彼なりのスーツマナーや今期のトレンド的な拘りがあるらしく、直すこともやぶさかではないが これ以上細く直すのは本意ではない、というような姿勢を見せた。わたしたちは 客の立場でありながら、この英国風紳士I氏にかかると従順な羊も同然になってしまうけど、でも、今回ばかりはそうやすやすと従ってはいられない!一触即発だ!しかしどこまでも諍いを好まないWRは「ここはいったん持ち帰り、しばらく寝かせてから直しに来よう……」と、中立案で折り合いをつけていた。まるでスイスのようなひと。その後 恒例の「つばめレストラン」で遅いランチを食べ、三越ジュンク堂で仕事用の書物と趣味の文学を購入する。初夏のような良い天気なので、代々木上原周辺をつらつらと散歩。あとは本を読んだり眠って過ごす。牧歌的な休日。しかし春がやってくる兆しに出会うと、ひどく鬱になる。今時珍しく花粉症は持ってないけど、なまぬるい風に乗って飛ばされてくる花粉みたいに、昔の記憶が粉になって、襲いかかってくるようだ。記憶の濃厚さに いつもむせかえりそうになる。憂鬱な春がまたやって来る。