嘘をつかないから嘘吐き

7時に起床。平日にしては大寝坊。慌ててシャワーをして髪を乾かしてベーグル齧りながら化粧を終えて、家を飛び出す。ホームで電車を待っているとき、携帯を忘れたことに気がついた。夜の予定が何もない日なので、特には困らないけど。こうなると時計もないし、返事を待ってるメールもあるし、やはりなんとなく落ち着かない。

原稿校正は無事終わり、日常業務に平和が戻る。午前中から昼食までの時間にかけて、寒気と頭痛と吐き気で最高潮に気分が悪く「これはいよいよ完全に風邪だ」と覚悟したのだけど、一緒にランチに行ったSM1ちゃんにはおくびにも出さないよう、我慢して昼食を食べているうちに、不思議なことにケロリと治ってしまった。ふつうのひとが 4.5日かけて辿る「風邪」の行程が、わたしの場合は4.5時間に集約されているのではないだろうか。平日や休日問わず、明らかに発熱していて身体が辛いときがある。しかし半日ほど我慢したり眠ったりするうちに、見事に治る。ハハ、げんきで良いね。

仕事を終えて会社を出ると、朝の予報通りしとしと雨が降る。傘は持っていない。でも、会社も家も駅から近いのでちょっとくらい濡れても全然構わない。昨日行けなかった前髪切り、わたしがバカにしている¥500前髪カットの美容室は火曜日なのに空いていたので、背に腹は代えられず、思わずお店に飛び込む。目にかかる部分だけを切ってもらって、とりあえず視界は良好に。それにしても、切りながら必ず何かを話さなくては、と思っているのか「お客様の前髪、生え際の癖で凄く浮きますね」などと話しかけられて、思わず「いえ まったくそんなことないのですが」と答えてしまった。いつも通っている美容院は、スタッフが皆勉強家で接客レベルも高いので、実際に「短く切ったら前髪が浮く」なんていう低レベルの問題はありえないし、それを客の髪質のせいにすることもない。僅か30mしか離れていない美容院なのに、技術や接客レベルの隔絶がハワイとシベリア並みに遠く離れているので、改めて驚く。美容院でもマッサージでも病院でも、未だに客の身体の一部や慣例を否定することで、その後の話を優位に進めようとしたり、自分の技術不足の言い訳にしようとしたりする所は多い。偶々クライアントの経験が浅ければ、コロッと騙されることもあるかもしれないけど、あまりにも自己中心的で無責任な営業手法だと思う。何だかんだ文句を言いながらも、結局また¥500前髪カットに来てしまっているわたしもどうかとは思うけど。クリーニングのピックアップをしてから帰宅。何件か届いていたメールの中に、驚くような案件があり、動悸がする。夕食は、冷蔵庫の中にあるものだけで作れる醤油味のパスタ。動揺したままキッチンに立った為か、この日かならず使い切りたかった ほうれん草1束ごっそり、パスタに入れるのを忘れてしまった。ベーコン、きのこ、タマネギ入りのパスタでも充分美味しかったけど、見た目が完全に“場末の喫茶店のスパゲッティ”。ほうれん草を忘れるべきではなかった。……

雨のせいか、物凄く寒い。布団にすっぽり包まって、ねこだけを布団の上に出して(小高い丘のうえで)今夜もねこ遊びをする。WRは 大河ドラマの影響の為か、さいきん ねこんこ を上杉謙信に、ねんねこ をその家臣に仕立てて、ねこたちに弓矢を放たせたり、イクサをしたりする。わたしはねこがレストランに行くとか 気球に乗って旅に出るとか ワカサギ釣りに行くとか、そういう話がいいのに。……

今 とても後悔している。悔やむ暇があるのならどうしろこうしろ、という 自分を鼓舞する為のフレーズが、まったく表面的で馬鹿気ている、と断言しても構わないくらい、後悔する以外 何ひとつ手の打ち所がない、完膚無きまでの後悔があるのだということを、はじめて思い知っているかもしれない。泥沼のような 闇のような、ブラックホールのような後悔。自分は、この後悔を後生大事に抱きしめて生きていくわけか。やってしまったことの後悔と やらずに目を逸らしたことの後悔が、綯い交ぜになって濁流のように襲い掛かってくる。考えただけで 頭が狂いそうな感情。嫌な起伏。どうやら 完全な、弁明不可能な大間違いを犯してしまった。