霧雨の夜 しろいやさしいねこ

人事異動シーズンで、会社の中はそわそわ。けれど、芸能人のゴシップをもっと卑近にしたようなこの手の噂話―昇進、左遷、人物評―には、人々がその話題に熱中すればするほど「……どうでもいいじゃん」と 心底から思ってしまう。駐在員や駐在社長のシャッフルを含め、あたかも民族大移動の如く世界規模で移動があるけど、それでも誰もが自分中心に物事を見て語る。それぞれの頭上に、ひとの数だけ天動説があり、小さな世界がくるくる回る。傍観者であるわたしもそれは変わらないのであろう。日本より頭の中のほうが広いでしょう、と 敬愛する作家は云ったけれども、無限に広がる頭の中は、同時に 無限に小さく、狭く、不自由になる可能性も孕んでいるのだ。ああ、矮小で瑣末な感情など 今すぐ排除してしまえ。広い世界の頭は広く、狭い世界の頭は狭い。

業務時間の新聞チェック中、産経新聞(2/26付 朝刊)で可愛いねこを見た。
http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/natnews/225567/slideshow/156882/

よくよく読んだら ねこではなくて、トキの記事。だけど、トキのことなんて このねこの可愛さを前にしたら、微塵も目に入らないのがふつう。記事を読むと「ねこが諦め、トキ圧勝」と、明らかにトキ側に偏重した報道だけど、どう見ても「一緒にあそぼうと誘っているけど、トキがつまらない奴だった」という感じ。素敵に心根のやさしいねこちゃんだこと。両手を揃えて じーっと待っているところと、プイ!と帰ってしまうときの後姿が可愛い。

終業後、同僚のSMさんと 家の近所の呑み屋へ繰り出す。WRはこの日も深夜まで残業とのこと。夜な夜な呑みにほっつき歩いて、済まないと思いつつ、SMさんお勧めの黒豚鍋も焼き鳥も、たいへんに美味。若者向けのふつうの呑み屋で 値段も安いけど、久々にシンプルで美味しいものを食べた気がする。SMさんとも(家の近所限定で)頻繁に呑みに出歩いているけど、話題が尽きることがない。隣合わせに座って、顔を見つめながら話すと、肌や髪の毛がふんわりときれいで、目元というか顔立ちがすごく可愛い、と思う。わたしとはまったく無縁な、ビロードのような質感のひとだ。呑み屋を出て、カフェで珈琲を一杯飲んで、外に出る頃はもう23時で小雨。小走りで家に帰ると、WRはもう帰ってきていて、パジャマなんか着ている。洗濯も、流し台にたまったグラスも放置したまま就寝。ここ数日掃除機もかけていないし、テーブルの上も、床の上もなんだか埃っぽくて乱雑だ。呑んで帰るとまっさかさまに眠ってしまうから困ったもの。