早稲田、四谷

お昼から映画。新作の「ミルク」が話題のガス・ヴァン・サント監督の映画 二本立ての巻。わたしは「パラノイドパーク」が良かったと思い、WRは「マラノーチェ」を気に入った。後者は一般上映の機会がほぼ無かったという事情があるようで、切符売場も劇場ロビーも長蛇の列。WRはむかしから、蓋を開けてみればロードムービーが大好きのようだ。ガス・ヴァン・サント監督は、監督としてのキャリアをスタートさせた当初はゲイであることを公表していなかった、と、会社に送られてきていた雑誌か何かのコラムで読んだ記憶があったのだけど、「マラノーチェ」を観る限り、公表しようがすまいがふつうにゲイだよね、と思った。パラノイドパークは、スケボー少年の映画だった。スケートボードは、ローラースケートや一輪車とならんで、幼少の頃、微かなブームを見せていたけど、わたしは動き回る板の上に 1秒も立っていられないまま「なんてつまらない乗り物なんだ」と、始まりもしないまま 終わった。ローラースケートや一輪車も同じ。なので、傾斜がすごいのに ボードが足にくっついている物理現象自体から、解せない。少年らが パラノイドパークで滑るシーンも、足の裏と板の関係性についてばかり思いを巡らせてしまった。どうしてあんなに足にくっつくのだろう、スケボーの板は。

新歓の季節もたけなわ 早稲田松竹の前にも映画サークルのイベントと思しき、大学生のグループが 戯れ集っている。はじめて観る映画を観たり、暗い映画館を出た直後 春の夕暮れの柔らかな陽射しが一層柔らかく感じたりとか、そんなこの刹那の新しさの感じ方に関しては、18才の彼らも わたしも そう大して変わらないと思えるけれども、実際 18才なりの服を着た男や、18才なりの化粧をした女の喋り方とか会釈の仕方、そういう些細な部分でわたしはぜったいに18才の彼らではありえないし、彼らは勿論決してわたしではない。同じ時刻に同じ映画館の座席に並んで同じ映画を鑑賞する、しかし彼らがx年前の自分ではぜったいにありえない、想像上の取替えさえも不可能なことに安堵する。18才や19才の頃の、あんなに眩しかった日々の記憶装置が、早稲田通りも 春の日も 初夏も ブーツで歩いた秋も、冬も、すでに更新され過ぎて 去年のことや一昨年のことに きれいに上書きされてしまっている。

夜は大学時代の友人と会う。WRの同級生で、わたしの後輩にあたる。音楽サークルで一緒だった。この4月に東京に配属となり、何年振りかでこちらに住まうことになったというわけで、再会を祝して四谷三丁目で焼肉を焼く。仕事に関する興味深い話を色々。その他 本の話、音楽の話など 話題が尽きることがなく、おなかはお肉でいっぱい。