夕焼け だいきらいさ

今日は月例で行なわれる、社長と東京在籍役員たちとの連絡会の日だった。経費削減&ゴミ減らしの為、会議の時にエビアンを配るのが禁止となった為、午前中のうちに社長会議に向けて 浄水器の水とティーバッグで「手作り麦茶」を製作し、冷やしておいた。しかし給湯室の棚の奥底から引っ張り出してきたこの麦茶パック、賞味期限が3ヶ月前に切れているうえに、見たこともないメーカーのもので、中国産と表記してある。内心 大丈夫だろうか、とヒヤヒヤしながらお茶を配った。まさか 毒入り麦茶なんてことはないと思うけど、社長以下 役員の大半が死亡したりしたら、一面トップたし 株価大暴落だし ものすごく恐ろしくて ものすごく困る。お茶出しを終えたあと、喉が渇いたので余った麦茶を飲んでみたけど、なんかへんな味がした。

終業後、前髪切りの予約を入れていたので美容院へ。わたしの担当者ではないので今まで挨拶程度の会話しか交わしたことがなかった美容師の女の子が、先日 わたしと同じライブを観に来ていたので、いつもの担当者に髪を切ってもらったあと、その美容師さんとも音楽の話でキャッキャと盛り上がる。

前髪を切りに行っただけなのに、わたしが適当にシュシュで結わえていた髪を解いて、即席で編みこみのアレンジをつくってくれた。その編み方が すごく可愛くて、大袈裟でなくひさしぶりにほんきで感動してしまった。あとは家に帰って眠るだけなのに、勿体ない。これから遊びにいく約束でもあればどんなにいいか、と思うような編みこみなのだった。

誰かに親切にされたり 褒められたり、何か優しい言葉をかけてもらえるときよりも、わたしは 誰かのこういう才能に触れたときがいちばん嬉しい。ほんの僅かな気の利かせ方で、或は全く無意識の状態で、そのひとにしかない特別の能力がキラリと光る瞬間がとても好き。この編みこみのひとは わたしが認めるまでもなく美容師として一流だけど、わたしが髪につけていたシュシュについて、呟くように「あ、可愛い」と言い、即座に勝手に それに似合う編みこみをつくってくれた。友紀ちゃんが選んでくれるアクセサリーが、いつも 確実にわたしの好みであることもこれと同じだし、音楽家の友だちが 良い曲を作って世の中に認められることだってそう。WRがしごととなると超賢いことや、お喋りするとおなかがよじれるほど面白いこともそう。どれもこれも、わたしにとっての天才と思える。

書店に立ち寄って、帰宅。その書店では、わたしたちのミュージシャンSKと ノンフィクション作家MTによる、トークショウが行なわれていた。店舗の1/5分のスペースを区切ってイベント会場にしているために、マイクを通した声はよく聞こえてくるのだけど、整理券を持っていないひとには一目でも見せてたまるか、といった感じで、スペースを作るために避けた什器を衝立にして、出演者の姿を何が何でも見せないように している。どちらのひとも実際に見たことがあるし、おとなしく床に体育座りをしている、間の抜けた若者たちにふさわしいというべきか 漏れ聞こえてくるトーク内容にも鋭いものが何もなさそうなのに、その脇をすり抜けただけで「整理券は持っていますか?!整理券のない方はこちらには入れません!!!」と誇らしく厳しい口調で注意されたので、いや サブカルもどきの若者のおこつかいを掠め取って生きている、こんなやつらのトークショウなんて お金をもらったって聴きたくない、わたしは単に近所だからここに来ただけ、この街にいるからといって、全員がSKのギターや歌声に憧れて、SKを見たいとか、SKと会話したいとか、SKと結婚したいとか思ってるとか思ったら大間違いだよ、確かに ここで体育座りしている若者の8倍以上はSKの音楽について詳しいけど、でもトークショーなんか全然聞きたくないし、見たくもないし、実際漏れて聴こえるこのトークは、なんだかこのシチュエーションに陶酔しているようで、ちっとも夢中になれないような代物じゃないか、と 思わず言いそうになったけど、にこっと会釈してそのまま通過した。

WRはまだまだ毎晩遅い。虚弱体質っぽいので、まさか過労死なんてしないよね、と 急に不安になってきた。でもWRは 今月はずっと仕事ばかりだったので、お給料が入ったら、何でも好きなものを買ってくれるって。ワァイ。