ひとりあそび

雨は昨夜で降るもの全部が降ってしまったようで、日曜はすっかり春の晴天。昨日散々眠りこけた為に、この日は早くに目が覚めた。WRはしごと。今が一年でもっとも忙しい時期だというけど、くれぐれも身体を壊したりしませんように。

せっかく早く起きられたのが嬉しくて、仕事で来週から必要となる書籍を買いに、午前中のさわやかな光を浴びつつ、颯爽と新宿のジュンク堂に赴いた。10時開店だと思って勇んで出掛けたら、開店は11時だそうで、10分ほどライオン象の横に佇んで開店を待つひととなる。ドアが開いたと同時に、エスカレータを爪先で駆け上がって、必要な本があるフロアへ向かう。がらんとして、未だ誰もいない。広いフロアに、本棚と本棚に眠る本だけがある光景は、なんとなく朝の図書館を思い出させる。もっともっと意識の中を奥深く潜水していくと、本を読む自分の原体験に到達しそうな光景だった。でもそんな感傷は一瞬で冷め、経費で買う実用本をいそいそと物色。無事購入し、ついでに自分用の本も2冊購入して、山手線で馬場へ移動、今日は映画もひとりで観る。

ヤンシュバンクマイエルの短編集色々と、多分最も有名な作品「アリス」の上映。どちらもはじめて観るのではない。「アリス」のアリスが齧るアーモンドとチョコレートのついたビスケット、あれ わたし いつも美味しそうだと思う。わたしは本は同じ本ばかり繰り返し読む癖があるけど、映画に関してはどんなに好きなものでも2回も観れば、もう飽きる。この「アリス」に関しても、この寓話の世界観はとても素晴らしく琴線に触れるものだけど、それでも右から左に記憶を再生しているような気分になって、暗闇のなか じっと椅子に腰掛けながら、おしりが痛くてじりじりとした。でもわたしは動物の人形が好きだし、ビスクドールの瞬きも好き。座席は、お正月の小津とどちらか?というくらい、ガラガラに空いていた。2本立てを観終わって、15時半。映画館の隣のむげん堂で、なんとなく アンデス風の、だけども派手でもケバケバしくもない全体が刺繍で出来たミニスカートを買う。外はまるで春みたいな春。日曜日の早稲田通りは、さすがに学生の姿も少なくて、珍しく学生時代の自分ではなく、社会人になって、でも会社にも通わずぶらぶらしていて、週に1度 駅前のクリニックに通っていた時期のことなんかを思い出していた。あの医者は少なくとも良い医者だった、但し 何もできないわたしが思うのも失礼極まりないという話ではあるが、できることがあまりにも少なすぎた。あたりまえのことをあたりまえにする、それが大切なのだと口にするひとも多いけれど、もちろん確かにそれには賛成するけれど、あたりまえのことでは到底太刀打ちできない領域もある。雑居ビル。一世代前の、狭い長方形のエレベーター。待合室にいるひとびとは、それぞれにお洒落をしたり生活に疲れたような顔をしていて、誰もとても病気のようには思えなかった。

帰宅してうとうと うたたねをすると夜。WRからの電話で目を覚ました。駅前の書店で待ち合わせして、夕食を食べに行くことにする。ジンジャーエールと、ひよこ豆インドカレーを食べ、中古レコードを見て家に戻った。WRはしごとも、それ以外でもとても忙しそう。そして中古レコードなんかを漁ってはいるが、連日の超過勤務でとても疲れている模様。ねこの人形を動かして励ます。