棚になった

部署にひとり、新入社員が配属されてきた。新卒入社の先輩方が口々に言うには、文系採用の我々のパターンとしては、最初の数年はかならず地方の支社や販売子会社に飛ばされていくのが常らしいので、最初から東京オフィスの、しかも、うちの部署に配属というのは 会社的にも異例の大抜擢ということだそうだ。勿論、これも部長の力。新入社員は、わたしが働く会社に似つかわしい、礼儀正しくて 真面目で 明るく社交性がある感じ。そして、日英中のトライリンガルということだ。自分はまったくさっぱりだけど、此処にいるとそういうひとも何だか全然ふつうのことに思えてくる。とにかく、女性社員よりは 男性社員の方が、久々の若手男子の登場に沸き立っている。50歳のマネージャーなんか、勤務時間も昼休みも離すまい、とするかのように、レクチャーと称して小部屋に籠もり、ランチタイムも喜んで連れて出掛けたりして。ランチタイムくらい、年の近い男性社員に託して、送り出してあげればいいのに。これには皆、ちょっと同情していた。

今日は部長からの無茶な要求も無く、すんなりと帰宅の途。帰りの電車の中で、こちらも珍しくすんなりと仕事が片付いたらしい友紀ちゃんから食事のお誘いがあったので、よろこんでそのまま電車に乗って、新宿まで。ガレット屋でローストビーフのガレットをついばみながら、近況を話す。ゆきちゃんは イタリアに行ったり帰ったり、充実の仕事振りながらも面白いことが起きているようで、何事によらず、現在進行形で語ることを持っているひとというのは、聞いているこちらまでワクワクさせる。

レストランでの食後の珈琲を終えたあとは、近頃わたしたちが気に入っている、いつ行っても空いている喫茶店へ。2杯目の珈琲を飲む。ここでは、棚からボタ餅についての論議。ひとに臆面もなくおねだりしておいて、あたかもそれを棚からボタ餅のように、偶然のラッキーのように扱うひとっているよね、という一般論のような話からはじまったのに、最終的には「あのひとはわたしを棚としか見てないッ!」「観音開きを全開にして、わたしのボタを根こそぎ奪おうとしているッ!」と、心底棚の気持ちになって、見えない恐怖に囚われた。ストレスが溜まっている、多分。会社の悩みではなくて、しごとの悩み、しごととは何か?と考えつづける日々に対する悩みが深い。