タマゲちゃんに会えた日
WRはしごとのレポート書き。わたしは 風邪と風邪薬のせいで 一日中強烈な睡魔に襲われ、夕方まで眠ったり 起きたり 眠ったり、入院患者のように過ごす。夕方、WRの渾身のレポートがめでたく完成したので、わたしもようやくベッドから起きだして、本を買いに新宿ジュンク堂へお上りする。
わたしは病人であることに甘えて「どうせ 誰にも会わないからいいや」と投げやりな気持ちで、大昔 お洒落な店で買ったはずなのに その組み合わせで着ると Right-onで購入したようにしか見えない 背番号がかいてある変なTシャツと、緑のダボダボのワークパンツのまま外出してしまったところ、家を出てから僅か10秒で サークルの先輩とその彼女にバッタリ遭遇したので、恥ずかしくて死にそうになった。
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世間は夏休みなので ジュンク堂も なんだか混んでる。読みたい本は家にあるので 今はあまり本が欲しいとは思わないけれど、それでも、さすがにこれを買わなければ 自分の存在意義が失われるだろう、と思える本が数冊見つかってしまったので、とりあえず買う。河出のボヴァリー新訳とか。尾崎翠ムックとか。でも尾崎翠の本は チラと立ち読みで頁を捲るだけでも、薄っぺらい 期待できない なのに 矢川澄子ムックや 倉橋由美子ムックと同じように、やはり義務感に駆られて 購入してしまった。
1500円の価値はないと思いながら1500円を支払って入手している。こういう類の本は、この本自体に1500円の価値はなくても、どういう形態の尾崎翠であれ、尾崎翠自身に1500円以上の価値があるということを知っている人間の数だけは、売れてしまうものなのだろう。それが この本の1500円の価値の正体で、ある作家がブームとして取り上げられることの不思議さについても 考えてしまう。奇しくも 河出ボヴァリーの表紙と 似ているし。わたしは16歳の頃から、フロベールとトマス・マンとカフカとベケットと漱石が、絶対的に大好きです。大江健三郎は おとなになってから 好きになった。ラヴェルとドビュッシーとリムスキーコルサコフとヨハンシュトラウスも好きです。ボブディランも好き。アメリカとイギリスのロックが好きだよ。カントリーフォーク。美人で可愛いひとが好き。美人なひとも 可愛いひとも、おともだちの中に沢山いるけど、美人で可愛いと思うひとは、絵の中や 映画や写真の中でしか 会ったことがない。わたしは これからは また 繭のなかに籠もって大人しく、本を読んで生きていこうと思います。
- 作者: サルトル,Jean‐Paul Sartre,海老坂武,澤田直
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- 作者: ギュスターヴ・フローベール,山田ジャク
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新宿のハイチカフェでハイチ風ドライカレーを 食べて、アイスコーヒーを 飲んで、夕暮れには早い夕方の街を 代々木まで歩いて帰る。線路脇の路地裏で、代々木在住の、ねこのタマゲちゃんに会う。タマゲちゃんは、まるみちゃんや ねんねこ や ねこんこたちの おともだち。タマゲちゃんはケータイを持っていないので、偶然会った日にしか遊べない。