あまりにも静か

金曜日。今日が終われば週末。今日が終われば、まるみちゃんが 帰って来る!

朝から代休で休みにしているひと、午後から半休や出張のひとも沢山いて、フロアにひとがいない。今日から『東京JAZZ』も開幕するし、余計にひとがいない。

ランチタイム、ソフィアちゃんと新人男子と3人でごはんを食べに行く。新人男子に、まんまと彼女とうまくいってない相談を持ちかけられた。新卒の時期って お互いの環境が激変するから、学生時代からの恋人同士はどんどん離れ離れになってしまって、あまつさえ配属の都合で遠距離恋愛さえ強いられるのに、彼らには未だ貯金も休みもなく、心に余裕もまったくなく、もちろん結婚のことを考えられるような大人でもなく、主に女が不安定で、それに引っ張られて男の大半も不安定で、すべてがうまくいかない時期で、だから22歳とか23歳とかの若者に限っては 恋人がいない悩みより、恋人がいることの悩みのほうがずっと難解で厄介だと思う、自分や周りの友達の経験上で云うと、ほんとうに これは。今までうまくいっていた物事が急にうまくいかなくなったとき、既にうまくいっていた時の考え方ややり方が通用しなくなっていることは明白なのだが、それでも その方法を捨て去ることは難しい。成功体験がそれを余計に難しくさせる。とはいえ、恋愛相談の目的は アドバイスを受けることでなく、(あまり検討違いの反応を示さない相手を選んで)聞いてもらう、ということなので、こうやって3人でキャッキャと言葉を交わし合ってさえいれば、大方はそれで大丈夫なのだ。

会社ではまた事件がいろいろ。企業のメンツの重要性をまざまざと思い知った。弱い犬ほどよく吠える、という言葉がピタリと当てはまってしまうから、この会社の内部でしか通用しない、矮小なプライドなんかとっとと捨ててしまえばいいのにね。

WRは勉強。わたしも最近、放課後はわたしがやるべきことに打ち込んでいる。しばらくは、週末の夜くらいしか一緒に食事できる時間もないんじゃないか。

夜、深夜には未だ早い夜、明日帰ってくる まるみちゃんへのプレゼントを買うために、とある本屋へ立ち寄ったら、へんな男のひとが ぐるぐると後をつけて来る。昔はまだストーカーという言葉は無かったけど、幼稚園から高校生まで、図書館や本屋で、よく見知らぬ大人の男に追いかけられた。電車での痴漢は有名だけど、街中で、たまたま目についた女のひとをかくれんぼか追いかけっこのように追い回す性癖を持った男、というのが世の中にはいて、それは洋服屋だとかデパートではなく、書店が多い。何度かぶつかりそうになったり、手を触れそうにして、ターゲットの意識を自分のほうに向けさせてから、何か変だ、と気づいたこちらを弄ぶみたいに巧みに書棚に身を隠しながら、ニヤニヤ、グルグルと追いかけてくるのだ。家までは歩いて5分の距離なので、店を出てから後をつけられでもしたら、余計にこわい。WRに電話したら、丁度駅に着いたところだったので、一緒に帰って事なきを得る。まるみちゃんのプレゼントは買えた。けれど、ものすごく嫌な気分。