六本木発最終の地下鉄

いつも通り早起きをして、WRもわたしもそれぞれ朝の御用。9月に入ってから、忙しくなった結果 かなり規則正しい生活を送るようになったけれども、規則正しすぎる生活は忙しくてそんなに身体に良い気はしない。

昼下がりは新宿へ。友紀ちゃんと 高島屋のAnna Louのお店に立ち寄って、贈り物に必要なアクセサリーを取り寄せてもらい、ついでに自分のピアスも衝動買いする。左が白で、右が黒のつがいの兎。ともだちが働いているところを見ることが好きだ。そして、何かの専門家であるひとのことを、わたしはとても羨ましく思う。アクセサリーのバイヤーにも、ミュージシャンにも、会計士にも、わたしはなろうと思わないしなりたくないけど、でも わたしはいつも身の回りの皆みたいになりたいと思う。何でもないひとが何でもないことをするのではなくて、何かできることがあるひとでいたい。

カフェに移動してお茶。たった今九州から帰ってきて、これから香港へ飛ぶという友紀ちゃんの上司の男性が、一時の帰京の合間を縫って、友紀ちゃんに商品を手渡す為にやって来た。黒のスーツで、色も黒くて、見るからにファッション業界のひと、という感じ。わたしは色が黒い男のひとが怖い。たまたま一緒にいただけのわたしにもさつま揚げのお土産をくれたりして、面白そうで素敵なひとだけど、それでもわたしは色の黒い格好良い男の人がとても怖い。音楽業界の男の人も、堅気ではない風貌のひとは沢山いるけど、何かファッションと音楽の、業界的な側面の、圧倒的な隔絶を感じた。

夜は六本木に移動して、今度は友紀ちゃんの恋人のKと合流し、WR抜きの3人組みで、ヒルズの和食屋でお酒を呑む。ハートランドを呑んだあとは、Kが選んでくれたワインの白とワインの赤。最近お酒を呑む日があまりないので、なんだかあっという間に酔っ払ってしまったよ。酔いがまわって、どんどん図々しくなっていって、Kに色々と議論を吹っ掛けたような記憶がある。議論と云っても、政治とか経済とか文学とか映画とかじゃなくって、Kに纏わることの色々。或いは、世の中の男性全般に関する個人的な疑問点とか。それでもワインが回って、眠い 眠い眠い。友紀ちゃんは ふつうの状態であれば滝沢クリステルと同じ顔なのに、既に物凄い睡魔に襲われていて、気づいたら また顔が ガチャピンに変貌していた。幾ら普段がクリステルでも、うっかり眠くなると凄いリスキーだ。最終の地下鉄に飛び乗って、最終列車でひとり家に帰る。わたしは明日は休日出勤。社長の原稿を書く為に、電話の鳴らない会社へ行く。

ベッドに入って、久しぶりに真上の天井をじいっと見つめて、何だか今のわたしは死ぬのを待っている病人のようだ、と そんなことを思って、死ぬ前には 好きなひと皆に会えるだろうか?これで最期だからと伝えたら、わたしが会いたいひとは全員 仕事も旅行も放ったらかして、この天井が見えるわたしのベッドの周りに集まってくれるのだろうか、と考えて、だけどそうすると わたしが会ってほしくないひと同士が、何組も何組も対になって集まってしまう、自分はまったく碌な生き方をして来なかった、でもわたしはもう死んでしまうから そのあとがどうなろうが知ったことではないのだろうか、今までもこれからも多分そんなふうに碌でもないねきっと、とか考えてしまって、ちっとも感傷的になれない。明日は会社。空いている電車が楽しみ。電話の鳴らない一日が楽しみ。楽しみ。