ただただ暗い者だけが待ち望んでいたパーティー

おしごとのあと、丸の内線に乗って、とあるパーティー会場へ駆けつけた。此処へ来るのは数年ぶり。完全に外界を遮断した秘密の場所で、ひとつの愉しみの為だけに東京中から集まった ほんの少しのひとたちが、ひとりずつひとつの愉しみに耽る。

もちろんわたしにとっても最高にとくべつでうっとりするような時間だったよ。だから誰とも分かち合いたくない、此処にいるひとだけの大事な愉しみについては日記になんてとても書けない。こんな高尚な秘密のあそびを、お友達にも夫にもわかってほしい気持ちなんて更々ないよ。そのせいでどんな苦情に晒されようと、わたしはもう10年もずっとこう。宝箱に厳重に鍵をして、わたしが取り出すとき以外は しずかに閉まっておきたいんだよ。わたしたちのあそびのあそび方は、良識があって礼儀正しく整然として、つまり それはこの世でいちばん美しいやり方なのです。喚いたり 踊りだしたりするひとなんていない、そんなひとは皆 扉の入口で締め出されてしまっているから。それが何かを知りたがったり、すぐに恍惚となるひとは、永久に中には入れない。此処は一度入ると絶対に出て行きたくなくなる場所、いっそ全員の靴を取り上げちゃってほしいと思うよ、迷宮に迷いこめるかどうかにも その才能が問われるよ。ひとつだけ言っておくけど、怪しい薬も飲み物も、何も飲んでない、亡霊たちの晩餐会みたいに わたしたちは ただただ陽気でいただけだったよ。