ボヴァリズム

October 9, 2009


3連休の始まり、金曜の夜。生理痛を飛ばすドラッグで朦朧。帰宅前に渋谷の町をうろついていたら、石井くんから連絡があり、女3人で“かえる”に行くことに。WRも来る、しかしWRはごはんだけ食べてすぐに帰る。女3人で展開される会話ほど耐え難く退屈で浅ましいものも世の中にないけど、石井くんとミッキンの3人だけは全然別で、このときばかりは いつも 面白すぎておなかがよじれる。話題は インドエステと大久保の垢すりの話、ハニービー博士のクリームの効果、スポーツジムやスパで集団化しているババアは殺してもいいんじゃないかという話、サークルの友人の中でDVしそうな奴は誰かという話、バウムクーヘン事件の再現、など。話の内容自体はごくふつうだけど、石井くんもミッキンも 文才がありあまりすぎて只事ではない。愉快な秋の夜。


October 10, 2009


それぞれ外で別の用事を済ませてから、夕方WRと新宿で待ち合わせ。『空気人形』を観賞。現代の日本人の映画監督って、みんな ソフトフォーカスで、クウネルぽいかお洒落っぽいかのどっちかで、舞台は大概が東京か あるいは地方の田舎で、空虚感とか都市の孤独とか家族の溝とかを描いてて、とにかく押しなべて同じような作風に見えるから区別が付かないんだけど、是枝監督の映画は まだ2つか3つしか見たことないけど、わたし結構好きかも。『空気人形』も現代の日本の映画で、例に違わず定型的な病み方をしているひとか 孤独なひとしか出てこなかったけど、でもまぁ新しい精神病の型を見つけるために映画があるわけではないのでそれは良い。わたしは映画好きなひとではないので、映画を見ると必ずどこかに不満足を探してしまうけど、この映画には、物足りなさや疑問が全然なかった。空気人形のぞみちゃんの、ペ・ドゥナの実写の顔じゃなくてお人形の顔が、昨晩遊んだばかりのミッキンにそっくりだった・・、ミッキン お人形みたいに可愛いのに、それが仇となってダッチワイフにそっくりだなんて気の毒に。映画で泣いたことなんかないのに、空気人形が お誕生日会を空想する場面では あまりにも不憫でうっかり涙が出そうになってしまった。心を持ってから知り合ったひとたちが全員登場してお誕生日をお祝いするんだけど、それが 道ですれ違ってひと言だけ言葉を交わしたひとたちだったりするんだよ。わたしも、結婚パーティーに呼べるともだちなんて殆どいないから、その気持ちはよくわかります。救いの無さが心地よく、腑に落ちる映画という感じ。





October 11, 2009


にちようび。朝から渋谷で『ボヴァリー夫人』を観賞。フロベールなのに ロシア映画という時点で何かが異常だと気付いていたものの、やはりこの映画は原作の異常さと同じベクトルでの、映画らしい異常さに満ちた気色の悪い作品だった。蝿飛びすぎだし、何よりボヴァリーのルックスが凄い。ボヴァリー キメすぎ。ボヴァりすぎ。わたしの大好きな薬屋大爆発のシーンが無かったのは残念だったけど、もうひとつの目玉 足切断エピソードは忘れずちゃんと組み込まれていたので、許す。シュバンクマイエルの映画を観た後と同じような読後感。朝早く、ということもあって、観客に若者の姿は皆無で、銀髪の松涛マダムや文研の教授、みたいなひとが多かったけど、やっぱり貴族階級ってグロテスクだよね。宇田川カフェで大慌てでランチを済ませ、WRもわたしも午後の予定に向けてそれぞれ別の場所へ。この連休中は、映画を観る以外 一日中別行動なので、わたしたちはまるで ミクシーで出会った映画ともだちのようであった。ボヴァリーを観たあと、数時間は あまりの強烈さに頭の中がボヴァってクラクラしていた。

夜は、またしても石井くんのお誘いで、石井くんの友人宅でのホームパーティーに参加。これが凄い。築50年のレトロなお屋敷で、庭に面したリビング2間をぶちぬいて、サロンのようになっている。数えることは不可能だったけど、きっと40人くらいは居たのではないか。ホームパーティーにありがちな、クリエイティブ職業のひとが沢山いて、しかも早稲田の卒業生が半数以上いたようで、室内なのに帽子率が異常に高く(実は全員 禿げなのだろうか?)、お洒落眼鏡にお洒落髭、お洒落重ね着でも喋るとエキセントリックな部分が1mmもなくまったくのまとも、まともどころか 根暗な振りして話してみると意外にも相当爽やかなクソ野郎、みたいに思えるひとたちが わんさかといた。何年入学っすか?学部ドコっすか?的な会話がそこかしこで交わされる、馴れ合いの果てのあのおぞましさ。しかも おぞましいのはそればかりではなく、サロンから2Fへと続く螺旋階段を上がったすぐ上の部屋では、90歳のおばあちゃんが眠っているのだろうだ。90歳だから耳が遠く、真下のサロンで40人の若者が狂騒を繰り広げていたも、いっさい気付いていないそうだ。トイレに行くのにも そのおばあちゃんのフトンの真横を通らねばならない。なんて恐ろしい場所なんだよ。

結局わたしは、石井くんや 別の場所で数回会ったことがあり顔を知っているひとと 身を小さくして お酒を呑んでた。途中、有名人っぽいひとが来て、即席ライブみたいな状況になり、もうジョンとかレノンとかラブとかピースとかのグルーヴに席捲されたけど、やっぱりわたしは こういうのダメ。「映像とかやってます」とか言う男がダメ。あまり我慢するのも代謝に悪いと思い、23時頃 勝手に帰宅。あの後は いったいどうなったのだろうか。





October 12, 2009


体育の日で今日もお休み。3日連続で映画に行きたかった けれども、席がとれず諦める。WRは一日中外出。わたしはお昼の早いうちに用事を済ませ、暇を持て余した午後は 渋谷をぶらぶらと 歩く。“オープニングセレモニー”を眺めた後、電器屋でイヤフォンを買って、すぐに家に戻る。ああ、毎週 3連休があるといいな。でもお休みが多いと、お金を使いすぎるような気もする。姿が見えないのに、街を歩くと何処からともなく 金木犀が香る。昼はまだ太陽が燦燦と明るく、暑くさえあり、渋谷の女の子たちはムートンブーツとサンダル履きが半々くらいで、今年の秋は 季節がよくわからない。渋谷の町に、お小遣いを持って、きれいなものを探しに行ったのに、わたしの欲しいきれいなものは見つからなかった。金木犀の香りはきれいだけど姿が見えない。WRは 仕事の勉強が大詰めで、夜まで家に帰らない。ねこんこの 顔の白いところが、手垢で汚れて黒くなってる。かなしい。生理が終わって、背骨がポキポキと鳴っている。