マドンナ

3ヶ月に1度の割合で、派手な家族喧嘩が勃発する。しかもそれはいつも決まって 出勤前の朝の時間。起きてから出勤する迄の1時間半、その間リビングで一緒に過ごすのはたかだか10分くらいのものなのだけど、その10分で口論の火種がつくのだから、早起きは三文の得なんて大嘘で、早朝はきっと魔の時間だ。まるで夜みたいな暗い顔で会社に出掛ける。

昼下がり、会社のデスクからWRに 「ごめんね!」とメールしてみた。数時間経っても返信がないので、「ゆきんこ かわいい」「ゆきんこ美人」「ゆきんこが ごめんっていったけど!」 「ゆきんこファッションモデル」等々、WRがわたしのことを思い出すように、自分で自分の噂話を書いて10分おきに送信。そうこうしているうちに、「別にいいけど!」と返信がきた。

しごとの後は、中央線沿線にて、Fのパーティーナイト。会場は 蔦が絡まる古い古い木造家屋で、目には見えない埃が舞い飛んでいたのか、席に着いた途端、すぐに喉が痛くなった。それでもFのパーティーは今夜もたいへん素晴らしかった。人でも物でもかたちのない何かについても、魅力のようなものって、往々にして その不完全さや不完璧さ、欠落、不均衡といった何がしかの隙から放たれるものだけど、FのパーティーやFの魅力に関しては唯一違って この小さな小さな世界には、現実では絶対に成立不可能なパーフェクトがある。今夜Fが弾いていたギターは、旧い音叉マークが貼りついていた。ジャニーズよりもディズニーよりも、1億倍は素敵な世界を見せてくれるよ。ドリンクはどれも味が薄くて、トイレは古くて、皆息を潜めて静まり返って、咳をするのも恐ろしいような場所だけれども。パーティーの後は、最終電車の時刻まで 先月おともだちになったhさん、kさんと酸っぱいカクテルを呑みにいく。夜更かししても平気な夜も、時々はある。