とくべつなひと

死が別つものを 村上春樹はかつて「喪失感」と表現したけど、
「喪失感」なんて ねぇ、
それが自分の所有物だと信じていることが 前提の、
自分の感傷や自分の痛みや自分の孤独感に付随する感情なので

わたしはわたしの大事なもののために わたし自身に陶酔なんて できない し、


ほんとうの悲しみは 甘ったるい「喪失感」のことであるはずもなく、

それは ちっぽけな自分なんて その瞬間に完全に消滅してしまうくらい、

容赦のない断絶のことだったよ



希望も記憶も言葉も思い出も優しい心も 才能も
信じているだけじゃなくて 確かに繋がることで存在していた事象のすべてが

いっぺんに ぜんぶ ハサミで切れた



伝えたいことも云いたいこともありすぎるから 言葉にして削りたくはない

意味付けたり 言い訳したりしたくない
だから何も喋らないよ



希望が去り、これからわたしは何になるかな

何になるんだろう